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知的財産アナリストが先行技術を調査する際に知っておくべき3つのこと

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裁判所が命じた特許侵害の損害賠償額の中央値は上昇しており、その総額は年間数十億ドルに達します。特許アナリストには重大な責任がのしかかっており、包括的な先行技術特許調査を行うことで、商業化前の技術革新の新規性を確認する立場にあります。先行技術調査が不完全だと、特許が無効になったり、特許出願が却下されたりすることもあります。では、知的財産アナリストとして、知的財産(IP)調査戦略で見落としをなくすにはどうすればよいのでしょうか。

1. トピックを十分に理解し、確実に包括的な検索を実行できるようにする

先行技術調査を開始する前に、該当するトピックと分野を理解し、関連性のある類義語や分類をすべて自信を持って特定できるようにしておく必要があります。こうすることで、時間を節約し、検索効率を高めることができます。たとえば、特定の低分子薬やポリマーに関する先行技術を探すなら、その化学式やマルクーシュ構造のほか、その科学名、一般名、またはブランド名などのあらゆる名称や、潜在的な用途、そして知的財産を左右するその他のパラメータも把握しておく必要があります。

例えば、抗体薬物複合体(ADC)開発のための先行技術調査をおこなうのであれば、簡単な名称検索をはるかに超える、主題に対する多面的な知識と戦略が必要になります。ADC は、毒性のあるペイロードを標的細胞に直接選択的に送達するよう設計されており、標的部位である抗体と、強力な細胞毒性を持つペイロード、そしてリンカーの3つの部分から構成されています。この分野における知財解析は、ADC全体だけでなく、すべての個別コンポーネントも含める必要があります。以下にいくつかの例を示します。

抗体

  • 特定配列の検索:これには、結合特異性に不可欠な相補性決定領域(CDR)に焦点を当てた、完全な抗体配列(重鎖および軽鎖)、または断片が含まれます。
  • 変異体および誘導体:検索では、遺伝子変異、化学修飾、そして特異なアミノ酸の存在を網羅する必要があります。たったひとつの修飾が抗体の機能性に大きな影響を与えることを考えると、正確な配列の同定は極めて重要です。

リンカーとペイロード:

  • 化学構造検索:これらは、リンカー(ペプチドベースのものを含む)やペイロードの化学的性質を特定するために不可欠です。このステップには、広範な一般式や、その他関連性のある組み合わせを網羅するために、多くの場合マルクーシュ検索も含まれます。MARPAT ® など、特許内の物質のキーを含むデータベースを使用します。

包括的なADC検索は、検索手法と各種アプローチを組み合わせたものです。これには個々の要素の精密な検索と、それらを組み合わせた結果に対する分析も必要になります。ADC の重要な側面が最初のブレインストーミングの過程で考慮されていなかった場合、検索者は関連する先行技術を見逃してしまい、その結果、重大な下流リスクにつながる可能性があります。

知的財産(IP)チームと研究開発(R&D)チームの間で頻繁かつ早期の連携を確立することで、トピックの理解を深め、微妙な科学的詳細を見落とす可能性を減らすことができます。サーチのプロセス中は、依頼者およびその他の主要ステークホルダーと頻繁に連絡を取り、その専門知識も活用するようにします。進捗状況を定期的に報告することで、相手が最新情報を常に把握できるようになるだけでなく、貴重な洞察や商業化の計画に対する糸口が得られ、検索方法の確立に役立ちます。合意が形成されたら、研究の進展に合わせて検索を繰り返し、検索方法を改良し続けることができます。

2. 包括的な先行技術特許調査のために複数の方法を活用

包括的な先行技術調査結果を得るためには、以下を含む複数の検索方法とアプローチを用いる必要があります。

  • キーワード/テキスト検索:対象となるイノベーションの主な概念を特定し、それらの概念からキーワードと用語を作成します。テクノロジーのさまざまな側面に焦点を当てた広義の用語から始めて、より具体的な、つまり「狭い」キーワードを追加していきます。次に、それらキーワードの両方またはすべてが使用されているエントリーに注目します。広義から狭義へと検索するこの方法なら、まず確実に検索結果に主要コンセプトが含まれているはずです。
  • 特許分類の検索:関連性のある技術分野を特定し、その具体的な分類内で検索を行います。分類方法に関しては、選べるものとしていくつか独自のシステムがあり、それぞれ分類方法も異なっています(たとえば化学と冶金学、生活必需品、繊維と紙など)。例として、International Patent Classification(IPC:国際特許分類)、Cooperative Patent Classification(CPC:欧米共通特許分類)などがあります。
  • 引用検索:密接な関連性がある特許を、参照されている他の特許に基づいて特定します。後方引用検索では、特定の記録によって引用されている文献をすべて探し出す一方、前方引用検索では、特定の記録が引用されている文献をすべて探し出すことで類似特許を見つけることができます。

ヒントCAS STNext® では、科学的な知財(IP)の専門家が作成した抄録が添付された付加価値データベースを提供しているため、法律用語が減り、エントリーの知的財産の内容が理解しやすくなっています。付加価値データベースを使うことで、コンセプトに相互関連性があること、関連性のある情報を取得していること、そして標準化された数値による特性測定を使用していることが保証されます。

3. データベース間の大きな違いを埋めるようなツールを使用する

データベースの網羅範囲には違いがあり、システムは提供内容を明確に示す必要があります。検索をおこなう前に、それぞれのデータベースから何が期待できるかを知っておくと、時間をより効果的に使えるほか、検索の幅と奥行きを最大化できるような検索戦略を構築することができます。そこで、与えられた情報について、以下の点を調べていきます。

  • どの国が対象となっているのか
  • どういった期間が対象となっているのか
  • どんな種類の文書が対象となっているのか
  • 第一レベルのデータベースなのか、付加価値データベースなのか

CAS STNext のようなプラットフォームでは、類似したデータベースのクラスターを同時に検索できるため、検索時間を大幅に短縮できます。

包括的な先行技術特許検索は難しさを伴うものの、粘り強さが実を結ぶ

包括的な先行技術特許調査を行うときは、80%の関連文書を見つけるのに20%の時間がかかり、そして残りの20%を見つけるのに80%の時間がかかると思ってください。努力が報われないと感じ始めたときでも粘り強く取り組むことが優れた特許検索者の証であり、リスクを軽減させる基本戦略でもあります。検索には真の完了などないとはいえ、さまざまな方法を用いて得た結果が収束し始めたら、完了に近づいていることを示しています。

記録の取りこぼしを防ぐことは、研究開発費の浪費や財務上のリスクを回避することにつながります。包括的な検索を完了させるのは難しいとはいえ、検索方法が最大化されていれば、リスクは軽減され、結果に対する信頼性も高まります。CAS STNext では全体像が把握できるため、イノベーションのライフサイクル全体を通じて、確信に満ちた意思決定ができるようになります。

CAS STNext に関する詳細は、こちらをご覧ください。