科学のブレイクスルー:2024年に注目すべき新興トレンド

科学の最新トレンドについては、「科学的ブレイクスルー:2026年に注目すべき新興トレンド」をご覧ください。ハイブリッド太陽電池、オピオイドを使用しない疼痛緩和、次世代バッテリー技術、自己修復インフラなど、詳細なトピックを解説しています。


あらゆる分野や業界で日々科学的発見がなされる中、活況を呈するこの状況において、どのようにして新たなトレンドを先取りすればよいのでしょうか。CASは、近年の科学的ブレイクスルーやその基盤となった歴史的発見を独自の視点で捉え、今後の機会を切り拓くための専門知識を有しています。2023年には主要な科学的ブレイクスルーを特定しましたが、2024年にはさらに多くの可能性が期待されます。注目すべき新たなトレンドとして、グリーンケミストリーの急速な拡大、CRISPRの臨床的妥当性の確認、バイオマテリアルの台頭、そしてがんから神経変性疾患に至るまで、これまで治療困難とされていた疾患に対する治療法の新たな進展などが挙げられます。

CAS、ローレンス・リバモア国立研究所、オークリッジ国立研究所の専門家による本トピックに関する見解を聴き、関連ウェビナーの録画をご覧ください。

また、研究とイノベーションにおける新たな機会についての最新の洞察をまとめた「2025年に注目すべきトレンド」の記事も併せてご覧ください。

研究開発におけるAIの台頭

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AIの未来は常に先を見据えたものですが、化学や創薬におけるAI革命はまだ完全には実現していません。いくつかの注目を集めた挫折はあったものの、この分野が進化し続ける中で注視すべきブレイクスルーがいくつか存在します。生成AIは創薬発見に影響を与えており、機械学習は環境研究で活用が進んでいます。また、ChatGPTのような大規模言語モデルは、ヘルスケア分野や臨床現場での試験的な導入が進められています。

多くの科学者が注目しているのが、タンパク質の理解に革命をもたらしたDeepMindのタンパク質構造予測ソフトウェア、AlphaFoldです。DeepMindとIsomorphic Labsは最近、最新モデルの精度が向上し、タンパク質データバンク内のほぼすべての分子の予測が可能になったこと、さらにリガンド、核酸、翻訳後修飾へと対象範囲が拡大したことを発表しました。AI主導による治療用抗体の発見も注目を集めており、RubrYc Therapeuticsの抗体発見エンジンのようなプラットフォームがこの分野の研究を前進させるでしょう。

多くの人がAIの発展に期待を寄せる一方で、正確で利用しやすい学習データ、公平性とバイアス、規制当局による監視の欠如、学術界・学術研究・出版への影響、大規模言語モデルにおけるハルシネーション(幻覚)、さらには公衆衛生に対するインフォデミックの脅威といった懸念も議論されています。しかし、AIの継続的な改善は避けられないため、2024年を通じて多くの新たな開発やイノベーションが期待されます。

より「グリーン」なグリーンケミストリー

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グリーンケミストリーは、化学プロセスが環境に与える影響を最小限に抑えるための革新的な方法を常に追求している、急速に進化する分野です。ここでは、大きなブレイクスルーが見られるいくつかの新たなトレンドを紹介します。

  • Improving green chemistry predictions/outcomes: One of the biggest challenges in green chemistry is predicting the environmental impact of new chemicals and processes. Researchers are developing new computational tools and models that can help predict these impacts with greater accuracy. This will allow chemists to design safer and more environmentally friendly chemicals.
  • Reducing plastics: More than 350 million tons of plastic waste is generated every year. Across the landscape of manufacturers, suppliers, and retailers, reducing the use of single-use plastics and microplastics is critical. New value-driven approaches by innovators like MiTerro that reuse industrial by-products and biomass waste for eco-friendly and cheaper plastic replacements will soon be industry expectations. Lowering costs and plastic footprints will be important throughout the entire supply chain.    
  • Alternative battery chemistry: In the battery and energy storage space, finding alternatives to scarce "endangered elements" like lithium and cobalt will be critical. While essential components of many batteries, they are becoming scarce and expensive. New investments in lithium iron phosphate (LFP) batteries that do not use nickel and cobalt have expanded, with 45% of the EV market share being projected for LFP in 2029. Continued research is projected for more development in alternative materials like sodium, iron, and magnesium, which are more abundant, less expensive, and more sustainable.
  • More sustainable catalysts: Catalysts speed up a chemical reaction or decrease the energy required without getting consumed. Noble metals are excellent catalysts; however, they are expensive and their mining causes environmental damage. Even non-noble metal catalysts can also be toxic due to contamination and challenges with their disposal. Sustainable catalysts are made of earth-abundant elements that are also non-toxic in nature. In recent years, there has been a growing focus on developing sustainable catalysts that are more environmentally friendly and less reliant on precious metals. New developments with catalysts, their roles, and environmental impact will drive meaningful progress in reducing carbon footprints.  
  • Recycling lithium-ion batteries: Lithium-ion recycling has seen increased investments with more than 800 patents already published in 2023. The use of solid electrolytes or liquid nonflammable electrolytes may improve the safety and durability of LIBs and reduce their material use. Finally, a method to manufacture electrodes without solvents could reduce the use of deprecated solvents such as N-methylpyrrolidinone, which require recycling and careful handling to prevent emissions.

バイオマテリアルの台頭

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バイオメディカル用途の新しい材料は、2024年に多くのヘルスケア分野に革命をもたらす可能性があります。その一例が、Neuralinkが開発している脳コンピュータインターフェースシステムのように、電子機器と人体とのインターフェースを形成するバイオエレクトロニクス材料です。脳に直接埋め込まれた生体適合性電極のネットワークを使用するこのシステムは、2023年にFDAの承認を受け、臨床試験を開始しました。

  • Bioelectronic materials: are often hybrids or composites, incorporating nanoscale materials, highly engineered conductive polymers, and bioresorbable substances. Recently developed devices can be implanted, used temporarily, and then safely reabsorbed by the body without the need for removal. This has been demonstrated by a fully bioresorbable, combined sensor-wireless power receiver made from zinc and the biodegradable polymer, poly(lactic acid).
  • Natural biomaterials: that are biocompatible and naturally derived (such as chitosan, cellulose nanomaterials, and silk) are used to make advanced multifunctional biomaterials in 2023. For example, they designed an injectable hydrogel brain implant for treating Parkinson’s disease, which is based on reversible crosslinks formed between chitosan, tannic acid, and gold nanoparticles.
  • Bioinks: are used for 3D printing of organs and transplant development which could revolutionize patient care. Currently, these models are used for studying organ architecture like 3D-printed heart models for cardiac disorders and 3D-printed lung models to test the efficacy of drugs. Specialized bioinks enhance the quality, efficacy, and versatility of 3D-printed organs, structures, and outcomes. Finally, new approaches like volumetric additive manufacturing (VAM) of pristine silk-based bioinks are unlocking new frontiers of innovation for 3D printing.

月、そしてその先へ

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NASAが主導する国際宇宙探査プログラム「アルテミス計画」は、持続可能な有人月面探査という長期目標の一環として、2025年までに史上初となる女性および有色人種の月面着陸を目指しています。さらに、2024年に打ち上げが予定されているNASAのミッション「エウロパ・クリッパー」は、木星の周囲を周回し、木星の衛星の一つであるエウロパに接近して、水の存在や生命居住可能性を調査します。中国のミッションである嫦娥6号は、さらなる研究のために月のサンプルを地球に持ち帰る計画です。日本のJAXAによる火星衛星探査計画(MMX)では、火星の衛星フォボスからのサンプルリターンを目指しています。また、ボーイング社は、有人で地球低軌道まで飛行可能な再利用型宇宙船スターライナーの試験飛行を行う予定です。

アルテミス計画が研究開発にもたらす影響は、航空宇宙工学の枠を超えて広がっています。

  • ロボット工学:ロボットはアルテミス計画において、サンプル採取、インフラ建設、科学研究の実施など、多くの重要な役割を担います。これにより、自律システムや高度なマニピュレーターを含む新しいロボット技術の開発が促進されるでしょう。
  • 宇宙医学:アルテミス計画では、放射線被曝や微小重力といった宇宙旅行の危険から宇宙飛行士を守るための新技術開発が不可欠です。これには、医療診断、治療法、および対策における科学的発見が含まれます。
  • 地球科学:アルテミス計画は、月とその環境を研究するまたとない機会を提供します。これは、地球の歴史、地質学、気候に関する新たな知見につながるでしょう。
  • 材料科学:過酷な宇宙環境では、軽量で耐久性があり、耐放射線性に優れた新素材が求められます。これは航空宇宙、建設、エネルギーなど、多くの産業に応用可能です。
  • 情報技術:アルテミス計画では膨大なデータが生成され、それらをリアルタイムで処理、分析、共有する必要があります。これがクラウドコンピューティング、人工知能、機械学習といった新しいIT技術の開発を加速させます。

CRISPRの成果

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長年の研究、挫折、そしてわずかな進展を経て、CRISPRが臨床における治療用プラットフォーム技術であるという最初の正式な証拠が得られました。インテリア・セラピューティクス社は、hATTR(遺伝性トランスサイレチン型アミロイドーシス)治療薬の極めて重要な第3相試験を開始するFDAの承認を取得しました。さらに、同じCas9 mRNAを用いて、別の疾患である血管性浮腫を治療する新薬も開発しました。これはガイドRNAの20ヌクレオチドを変更するだけで達成されたものであり、CRISPRが臨床における治療用プラットフォーム技術として利用可能であることを示唆しています。

CRISPR創薬技術における第二の大きな転換点は、バーテックス社とCRISPRセラピューティクス社が、鎌状赤血球症および輸血依存性ベータサラセミアの治療薬として、初のCRISPR/Cas9遺伝子編集療法「CASGEVY™」が英国MHRAによって承認されたと発表した時でした。これはヒトへの使用が承認された初のCRISPRベースの治療法であり、人々の健康を改善するCRISPRの可能性を実現する上で画期的な瞬間となりました。

CRISPR-Casシステムは、その優れたゲノム編集能力に加え、早期がん診断を含む多くの用途で有効であることが証明されています。CRISPRベースのゲノムおよびトランスクリプトーム工学、そしてCRISPR-Cas12aやCRISPR-Cas13aは、がん治療や診断のための強力な検出ツールとなる特性を備えているようです。CRISPR-Casベースのバイオセンシングシステムは、早期がんの精密診断という新たな時代を切り拓いています。

MITのエンジニアは、尿中バイオマーカーを検出する新しいナノ粒子DNAエンコード型ナノセンサーを設計しました。これにより、簡単な尿検査で早期がん診断が可能になるかもしれません。がんタンパク質を検出できるこのセンサーは、腫瘍の種類や治療への反応性を識別することも可能です。

がんの根絶に向けて

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免疫腫瘍学の分野は、ここ数年で飛躍的な成長を遂げました。サイトカイン、ワクチン、腫瘍指向性モノクローナル抗体、免疫チェックポイント阻害剤といった承認済み製品の市場規模は拡大を続けています。現在、TAC01-HER2のような新しい治療法が臨床試験中です。この独自の治療法では、自己T細胞を遺伝子操作し、腫瘍細胞上のヒト上皮成長因子受容体2(HER2)を認識して除去するT細胞抗原カプラー(TAC)受容体を組み込みます。これは、転移性HER2陽性固形腫瘍に対する有望な治療法となる可能性があります。

もう一つの有望な戦略は、固形腫瘍に対してCAR-T細胞を、免疫応答を高めるワクチンと併用することです。免疫を活性化させることで、CAR-T細胞では殺傷できない他の腫瘍抗原を標的とする宿主T細胞を体内で増やすことができます。

もう一つの注目すべき傾向は、より効果的な個別化療法の開発です。例えば、最近開発されたウリジンmRNA-リポプレックスナノ粒子に基づく個別化RNAネオアンチゲンワクチンは、膵管腺がん(PDAC)に対して有効であることが判明しました。免疫腫瘍学における大きな課題は、治療抵抗性、予測可能なバイオマーカーの欠如、そして腫瘍の不均一性です。そのため、新しい治療戦略の考案が今後の研究の焦点となるでしょう。

エネルギーの脱炭素化

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2024年現在、化石燃料由来のエネルギー源をCO2を排出しない(または大幅に削減する)エネルギー源に置き換えることで、エネルギー生産を脱炭素化しようとする資金力のある取り組みが複数進められています。

その取り組みの一つが、既存の電力網に大規模エネルギー貯蔵装置を組み込むことです。これらは再生可能エネルギー源を補完する電力の需給調整を担うため、再生可能エネルギーの利用を可能にする上で重要な役割を果たします。貯蔵可能なエネルギー量や電力網への放電速度が異なる、さまざまな種類の系統用蓄電技術が開発されています。物理的なもの(フライホイール、揚水発電、圧縮空気)もあれば、化学的なもの(従来のバッテリー、フローバッテリー、スーパーキャパシタ、水素)もありますが、いずれも化学および材料開発の活発な研究対象となっています。米国政府は、インフレ抑制法の一環としての税額控除や、地域水素ハブを構築するための70億ドルのプログラムを通じて、この分野の開発を奨励しています。

一方、原子力発電は2024年も引き続き活発な研究開発分野となります。核分裂の分野では、複数の企業が電力生産や水素を含む化学製造に使用するための小型モジュール炉(SMR)を開発しています。核融合炉の開発には、物理学と材料科学における基礎研究が伴います。大きな課題の一つは、核融合プラズマに面する炉壁に使用できる材料を見つけることです。これまでのところ、候補材料には高エントロピー合金や溶融金属などが含まれています。

神経変性疾患

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神経変性疾患は、世界中で死亡や障害の主要な原因となっており、公衆衛生上の大きな懸念事項です。現在、神経変性疾患に対する根本的な治療法はありませんが、新たな科学的発見とメカニズムの解明が、患者の転帰を改善する鍵となる可能性があります。

  • アルツハイマー病:早期アルツハイマー病患者の認知機能および身体機能の低下を抑制する免疫療法薬2剤がFDAの承認を受けました。アデュカヌマブ(Aduhelm®)は2021年に迅速承認を取得しました。これは2003年以来となるアルツハイマー病の新しい治療薬であり、疾患の病態生理を標的として早期アルツハイマー病患者の脳内のベータアミロイド斑を減少させる初の治療法です。レカネマブ(Leqembi®)は2023年に通常承認を取得しました。これはアルツハイマー病の病態生理を標的とする薬剤として初めて臨床的有用性を示したもので、早期段階の成人患者において疾患の進行速度を抑え、認知機能および身体機能の低下を遅らせます。
  • パーキンソン病:医薬品や脳深部刺激療法以外の新しい治療法が研究されており、パーキンソン病の症状治療のためにFDAによって承認されています。非侵襲的な医療機器であるExablate Neuro(2021年にFDA承認)は、集束超音波を脳の片側に照射することで、振戦、手足の硬直、ジスキネジアといった重度の症状を緩和します。2023年には、バイオマーカーであるアルファシヌクレインの検証により、パーキンソン病研究に大きなニュースがもたらされました。研究者はα-シヌクレイン・シーディング増幅アッセイと呼ばれるツールを開発し、パーキンソン病と診断された患者や、まだ臨床症状が現れていない個人の脊髄液からこのバイオマーカーを検出できるようになりました。
  • 筋萎縮性側索硬化症(ALS):過去2年間で、ALS患者の疾患進行を遅らせる2つの医薬品がFDAの承認を受けました。Relyvrio®は2022年に承認され、ALS患者における神経細胞のさらなる死を防ぐ、あるいは遅らせる作用があります。トフェルセン(Qalsody®)はアンチセンスオリゴヌクレオチドであり、2023年に迅速承認経路を通じて承認されました。トフェルセンは、変異したスーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)遺伝子から生成されるRNAを標的とし、毒性のあるSOD1タンパク質の生成を排除します。最近発表された遺伝学研究では、変異がどのようにALSに関与しているかが継続的に調査されており、研究者は最近、NEK1遺伝子の変異がどのようにALSを引き起こすかを発見しました。この発見は、ALS患者の微小管を安定させるための合理的な治療アプローチの可能性を示唆しています。

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