科学は目覚ましいスピードで進歩していますが、新たな進展についていくのは簡単ではありません。CASは、歴史と現在の科学的背景の両方について独自の視点を持ち、新たなトレンドに関するインサイトを提供しています。最近、カリフォルニア大学バークレー校、オークリッジ国立研究所、POLARISqb、CASの専門家たちは共同で、2025年に注目すべき科学的ブレークスルーとトレンドを取り上げたウェビナーを開催しました。
ウェビナーの要点
ジャネットは、今年の記事で取り上げられた主要な科学トレンドについて解説し、パネルディスカッションのファシリテートを行いました。
- AIにおけるデータ品質:AIを活用した科学実験における、目的に特化した高品質のデータセットの重要性
- 精密医療:個々の遺伝的プロファイルに基づいてカスタマイズされた医療
- バッテリーの革新:持続可能なエネルギーソリューションの進歩
- 材料科学:様々な用途に向けた材料の開発
- 環境の持続可能性:廃棄物管理と循環型経済におけるイノベーション
- バイオテクノロジー:CRISPRやシングルセル解析などの分野における進展
- 量子コンピューティング:複雑な最適化問題を解決できる可能性
- オムニオミクス:シングルセル解析の次なる革命
これらのトレンドをさらに掘り下げるため、アーロン・ストリーツ博士、ヨンタオ・リウ博士、シャハル・カイナン博士がジャネットと共に、関連する多くのテーマに触れた幅広いパネルディスカッションに参加しました。
データ品質とAI
パネリスト全員がAIにおける高品質データの重要性を強調しました。ヨンタオ博士は、アクセス可能で標準化されたデータの必要性、そして研究者が高品質なデータを利用できるようにするためのFAIR(Findable、Accessible、Interoperable、Reusable)原則の重要性を強調しました。また、自律型ラボであれば大量の高品質データを生成できる点についても言及しました。シャハル博士は、さまざまな測定基準を使った多数の論文・出版物からデータを取得することが多い医薬品設計の分野において、クリーンでバランスの取れたデータセットを入手することは困難であることを指摘しました。アーロン博士は続けて、AIの予測精度はモデルをトレーニングするデータの品質に左右されると述べ、大量に生成される生物学的データと、解析に必要なリソース消費と計算負荷を最小限に抑えるための効率的なデータ収集方法の必要性についても言及しました。
量子コンピューティング
シャハル博士は、創薬などの分野における量子コンピューティングの応用について詳しく説明し、大規模な最適化問題を効率的に解決できる可能性について述べました。彼女は、量子コンピュータはまだ日常的なタスクに対応できる状態ではないが、特定の複雑な問題に対しては大きな可能性を秘めていると説明しました。また、大規模な最適化問題の解決に優れた量子焼きなまし方式のコンピュータは、サプライチェーンの最適化、ポートフォリオのバランス調整、暗号技術など、さまざまな分野で活用できると紹介しました。
シングルセル解析
アーロン博士は、細胞機能と相互作用を包括的に把握するのに役立つ多層的シングルセル解析の利点について説明しました。このアプローチにより、遺伝子変異が細胞の挙動や疾患の進行にどのように影響するかを示すことができます。彼は、現在のシングルセルゲノム分析の状況についても言及し、高スループットのシングルセルRNAシーケンシングによって、研究者が遺伝子発現に基づいて細胞をクラスタリングできるようになっていると述べました。また、細胞の状態や細胞内の情報の流れをより包括的に理解するためには、プロテオームやエピゲノムなど複数の分子情報レイヤーを統合することが重要だと語りました。
材料科学
ヨンタオ博士は、メモリデバイスからエネルギーハーベスティング、医療技術に至るまで広範な用途を持つ強誘電体材料の応用についての洞察を共有しました。彼は、環境への影響を最小限に抑えるためには、材料のライフサイクル全体を考慮することが重要だと強調しました。また、強誘電体材料は自発的に電気分極を発生させることができ、外部の電場によってその方向を切り替えられることを説明しました。この特性により、強誘電体ランダムアクセスメモリ(FeRAM)、センサー、エネルギーハーベスティングデバイスなどに適しています。
環境の持続可能性
全体を通して、パネリストたちは自らの研究に生態学的視点を取り入れる重要性を強調しました。シャハル博士は、量子コンピュータを使うことで時間とエネルギーを節約できる点を取り上げました。彼女は、コンピュータでシミュレーションを行うことで、従来のラボ実験よりも時間、リソース、エネルギーを節約できると述べました。アーロン博士とヨンタオ博士も、データ収集や材料生産における持続可能な手法の必要性を強調しました。アーロン博士は、リソース消費と計算負荷を減らす効率的なデータ収集方法の必要性を再度述べ、ヨンタオ博士は、太陽電池技術におけるペロブスカイトの事例を紹介し、環境への影響を最小限にするためには材料のライフサイクル全体を考慮することが重要だと強調しました。
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2025年に注目すべき科学的なブレークスルーとトレンドに関する貴重な洞察を、こちらの記事でさらに詳しくお読みください。ウェビナーの全録画はこちらでご覧ください。