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グリーンケミストリーは、グリーンな触媒から始まります。では、この新興の研究分野の最新の動向はどうなっているのでしょうか。 触媒はさまざまな業界、分野、研究開発のラボで不可欠なものです。そしてCASの最新のサマリーでは、新たな機会や課題、そしてイノベーションも見つかっています。 エネルギー、農業、製薬など、あらゆる産業において、これは持続可能性の指標を向上させる重要な要素となる可能性があります。
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がんとそれに関連する死亡率の負担は、人口の高齢化と、がんの主要危険因子の有病率と分布の変化によって、世界中で急速に増大しています。 2040年には2,840万人ががんと診断されると予測されています。これは、2020年から47%の上昇となります。
最も診断数が多いがんは、現在は肺がんを抜いて女性の乳がんになっています。推定では2020年には230万人(11.7%)が新たに乳がんに罹患するとされており、次いで肺がん(11.4%)、大腸がん(10.0%)、前立腺がん(7.3%)、胃がん(5.6%)となっています。 がん治療における重要な進歩のひとつとして、チェックポイント阻害薬などの免疫療法があります。 この画期的な前進にもかかわらず、免疫療法はすべてのがんに効く万能薬となっていません。 これは、すべての腫瘍タイプが免疫療法の薬に反応するわけではないためです。それに、対抗機構が腫瘍の免疫回避や増殖につながる可能性すらあります。
現在、米国食品医薬品局によって承認されているmRNAがんワクチンは現在ありません。しかし、チェックポイント阻害薬ペムブロリズマブ(メルク社)との組み合わせにおける治験用ワクチンmRNA-4157-P201(モデルナ社)は、完全切除後の高リスク黒色腫における補助療法として画期的治療薬に指定されました。 mRNA ワクチンがCOVID-19で成功したことから、研究者はmRNAワクチン技術ががん細胞の治療に応用できると確信しています。 では、がん治療にmRNA療法が取り入れられる日は近いのでしょうか。
多くの人にとって、COVID-19 mRNAワクチンは一夜にして開発されたもののように見えるかもしれません。 しかし、これらワクチンの迅速な設計、製造、そしてテストは、インフルエンザやサイトメガロウイルス、そしてジカ熱用のワクチンといった基盤となる長年の研究がなければ不可能でした。
1995年、画期的な研究によって、カルチノ胚性抗原をコードするnaked RNAを筋肉内に注射すると、マウスに抗原特異的抗体反応が誘発されることが示されました。 その翌年には別の研究で、mRNAを導入した樹状細胞を腫瘍を持つマウスに注射すると、T細胞免疫反応が誘導され、腫瘍の成長が抑制されることが示されたのです。 この研究が、mRNAをベースとした技術の実現可能性、有効性、安全性を探求する数多くの研究へ道筋をつけました。 しかしながら、最近までは、その不安定性、自然免疫原性、非効率的な生体内送達などが原因で、mRNAワクチンや治療への応用は限られていました。 研究者たちが直面した大きな課題は、mRNAをどのようにして必要な場所に届けるかということでした。mRNA配列を何らかの形で保護せずに体内に注入すれば、異物として認識され破壊されてしまうだけです。
そんな中、新型コロナウイルスSARS-CoV-2に対応するために行われたmRNAワクチンの急速な開発のお陰で、mRNAワクチンの使用は研究室から病室へと加速されます。 例えば、ファイザー/ビオンテック社とモデルナ社のワクチンは、mRNAを標的細胞に送達する上で脂質ナノ粒子(LNP)の利用が有効であることを実証しました。 2019年末、SARS-CoV-2の流行を受け、両社ともmRNA治療に関する論文を発表、すると関連特許出願が世界中で急速に増加しました。 2020年以降は、論文数は急速な増加傾向を示し、2021年には3,361件、2022年には5,000件近くにまで増加しています。 特許出願件数も2020年以降ずっと増加傾向が続き、2021年に382件に達しているほか、2022年には510件に増加すると推定されています(図1)。
COVID-19 mRNAワクチンが成功したことで、mRNAプラットフォームが他の感染症だけでなく、がんにも拡大できる可能性が明らかになりました。 さまざまなウイルス研究から得られた洞察が、今やがんワクチンの研究に役立つ可能性が出てきています。つまり一周して、出発点に戻ってたきたと言うわけです。
がんワクチンにおけるmRNAの応用範囲は広く、そこで研究者はがん免疫療法に向けて以下を含むいくつかの戦略を模索しています。
ジェネンテック社、CureVac社、そしてモデルナ社などの企業は、標的腫瘍に対する免疫反応を誘発できるネオエピトープをコード化したmRNAワクチンを開発しています。 mRNAワクチンは、単剤療法としてまたは併用療法の一環として用いる形で、膵臓がん、大腸がん、黒色腫などさまざまなタイプのがん患者を対象に数十件の臨床試験が実施されています。 いくつかの候補薬で第2相臨床試験が始まっており、黒色腫、非小細胞肺癌、そして前立腺癌で良好な有効性が示されています(表1)。
表1. がんの臨床試験中のmRNAワクチン(第2相以降)
ワクチン 名 |
CAS 登録 番号® |
対象 疾患 |
抗原 | 企業 |
Autogene cevumeran | 2365453-34-3 | 黒色腫、 大腸 がん |
患者特異的な 新抗原 |
ビオンテック |
mRNA 4157 | 2741858-84-2 | 黒色腫 | 最大34の新抗原 | モデルナ |
BNT 113 | 2882951-85-9 | PV16+頭頸部扁平上皮がん | HPV16由来の腫瘍抗原(がんタンパクE6およびE7) | ビオンテック |
CV 9202 | 1665299-76-2 | 非小細胞肺がん | NY-ESO-1、MAGE C1、MAGE C2、TPBG(5T4)、サバイビン、MUC1 | CureVac |
CV 9103 | 2882951-83-7 | 前立腺がん | 前立腺がん関連抗原4種類の混合 | CureVac |
SW 1115C3 | 2882951-82-6 | 非小細胞肺がん、食道がん | 患者特異的な新抗原 | Stemirna Therapeutics |
BNT 111 | 2755828-88-5 | 黒色腫 | 黒色腫関連抗原4種類の混合 | ビオンテック |
mRNAがんワクチンが研究者間で関心を集めている一方で、歴史的にはほとんどのがん研究はmRNA治療法に焦点を当ててきており、現在でも以下を含む、多岐にわたる候補薬が臨床開発段階にあります(表2)。
表2. がんの臨床試験中のmRNA治療薬
mRNA薬剤名 | CAS 登録番号 | 対象疾患 | 企業 |
TriMix-MEL、ECL-006、E011-MEL | 2877674-59-2 | 黒色腫 | eTheRNA Immunotherapies |
BioNTech-1、BNT 141、BNT-141、BNT141 | 2877707-22-5 | 固形腫瘍 | ビオンテック |
BNT-142、BNT142 | 2877707-34-9 | 固形腫瘍 | ビオンテック |
BNT-151、BNT151 | 2877709-82-3 | 固形腫瘍 | ビオンテック |
BNT 152、BNT152 | 2877709-92-5 | 固形腫瘍 | ビオンテック |
BNT 153、BNT153 | 2877709-93-6 | 固形腫瘍 | ビオンテック |
MEDI1191、MEDI-1191 | 2877712-03-1 | 固形腫瘍 | モデルナ |
mRNA-2752 | 2878461-50-6 | 固形腫瘍 | モデルナ |
SAR-441000 | 2879301-17-2 | 固形腫瘍 | Sanofi、 ビオンテック |
SQZ-eAPC-HPV | 2879306-51-9 | HPVおよび固形腫瘍 | SQZ Biotechnologies |
近年、mRNAがん技術は大きな進歩を遂げました。しかし根本的な課題がいくつか残っています。 まずmRNAがんワクチンは、標的組織/臓器に適切な親和性を持つ専用のパッケージングと送達システムを必要とするということがあります。 研究者は現在、これに対してはオリゴヌクレオチドに臓器の標的部位を結合させるなど、さまざまな手段を検討しています。 mRNA送達で最も研究されている媒体はLNPです。しかし細胞毒性の懸念と循環時間が比較的短いことから臨床応用が妨げられてきました。 そのため、mRNAカーゴのバイオアベイラビリティ、負荷、放出を改善するために、さまざまな代替スマート送達システム(エクソソームなど)が検討されています。
ただし、mRNAカーゴ送達の成功だけでは不十分です。 最大限の効果を得るため、生体内でタンパク質発現を高める手法も研究されてきました。 mRNAのすべての部分(キャップ、5′領域、3′領域、オープンリーディングフレーム、ポリアデニル化テール)が、タンパク質発現増強のために最適化できます。 そしてこの領域では、化学修飾ヌクレオシドが有望になっています。
タンパク質の発現量に加えて、mRNAワクチンの重大な課題として、タンパク質の産生期間が比較的短く、反復投与が必要なことが挙げられます。 RNAの寿命を延ばし、タンパク質の全収率を上げる戦略として、自己増幅型や環状のmRNAが研究されています。
まだ多くの課題が残されているものの、mRNAワクチンは、単独またはチェックポイント阻害剤など既存の治療オプションと併用することで、何種類かのがんの治療のための汎用性の高い臨床オプションとなっています。 最初のmRNA治療薬の発表が期待される一方、がんというグローバル規模の負担に取り組む中で、多数の革新的な戦略から生み出されてくる成果自体も、注目に値します。
mRNAワクチンと治療薬についての詳細は、ACS Pharmacology and Translational Science誌に掲載された弊社の査読付き論文をお読みください。
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中国杭州の西湖大学と協力して編纂された本CAS Insights Reportでは、生体システムと相互作用するバイオマテリアルの未来を最定義する、新しいハイドロゲルや抗菌薬、脂質ナノ粒子、エクソソームなどの状勢に焦点を当てます。 このレポートは、バイオマテリアルに関わる多数の産業や学問領域において、どういった新しい機会や最新トレンドがあるのか、そして今後の主な課題は何なのかなどを明らかにします。 詳細は、以下からレポートをお読みください。
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歴史を通じて、人類は老化のプロセスに興味を抱き、それを理解し、それに立ち向かおうとしてきました。 例えば古代中国の医学には、健康と長寿を促進するために考案された漢方薬や鍼治療法が含まれていました。 そして1930年代に、主要なマイルストーンがありました。カロリー制限によってマウスやラットの寿命が延びることがわかったのです。 20世紀は、さらに遺伝学や細胞老化などの要因の役割を探る画期的な研究が行われます。
CASでは、加齢の生理学とアンチエイジング戦略に関連した50万件以上の科学文献(主に学術論文と特許)が特定されています。 こういった文献は時間の経過とともに着実に増加しており、特に最近10年間で研究への取り組みが活発化しています(図1)。
アンチエイジングの研究のトレンドを見ると、これはますます活発になる一方です。 世界保健機関(WHO)は、2050年までに世界の60歳以上の人口が20億人を超えると推定しています。 この人口統計の高齢化により、加齢に伴う病気に対抗し、そして健康的な老化を促すためのアンチエイジング研究に対する関心と投資が増加しています。 国連(UN)は、2021年から2030年を「健康長寿の10年」と定め、高齢者の健康寿命を延ばし、生活の質を向上させる介入策を見出すため、世界的な協力を推進することを宣言しました。
老化は多くの慢性疾患の危険因子のひとつです。一方、全般的な健康と幸福に焦点を当てた、「サクセスフル・エイジング」を促進させることに対する関心も高まっています。 本記事では、老化のプロセスを掘り下げ、サクセスフル・エイジングと長寿を促進することを目的としたさまざまな介入方法を探索します。 これらアンチエイジング治療戦略のうち、サクセスフル・エイジングの促進で最も有望なのはどれなのでしょうか。
「アンチエイジング」という言葉は、往々にして、しわやたるみなど目に見える肌の老化現象を連想させます。 皮膚の老化は、その社会的・心理的影響の大きさから、広く研究されています。 身体における最大の臓器である皮膚は、身体を環境要因から保護する重要な役割を果たしています。 皮膚のこの機能は、老化に伴って低下し、健康全般に影響を及ぼします。 皮膚の老化は自然なプロセスではあるものの、その老化を遅らせ、皮膚の健康を維持する対策を講じることはできます。 ロレアル社やアモーレパシフィック社といった化粧品業界やスキンケア業界は、この分野に大きな関心を寄せており、数多くの特許も取得しています。 こういった企業の製品は、ヒアルロン酸やビタミンEなど皮膚の表層に作用する成分を使用しています。
老化のプロセスは表面で見えるものよりも、はるかに複雑です。 老化とは、広義の定義として、自身を守り、維持し、修復して効率的に働き続けるという、生体が本来持っている能力が徐々に機能的に低下していくことを指します。 脳は特に老化の影響を受けやすく、その大きさ、血管系、認知能力に変化が生じます。 そのため、アルツハイマー病など、加齢に伴う特定の神経疾患を発症するリスクが高くなります。
老化はまた、生理学的なフィットネスの漸減によって特徴付けられます。これは身体全体に影響し、機能の低下や脆弱性の増大につながっていきます。 老化だけでは、がんや糖尿病、または心血管障害などの重篤な疾患の直接的な原因にはならないものの、これら疾患やその他の病状の大きな危険因子にはなります。 この関連性が認知された結果、急成長しているこの老化研究の分野は、今や最前線に躍り出てきています。
老化とは、つまり時間の経過によるダメージの蓄積です。それが、老化の特徴として知られる特定の生理学的変化を引き起こします。 これは、2013年に分子および細胞における9つの特徴、つまり 老化の特徴 として定義され、それ以降の研究の枠組みとして定着しました。 この9つとは、ゲノム不安定性、テロメア短縮、エピジェネティクスの変化、タンパク質恒常性の喪失、栄養感知の制御不全、ミトコンドリアの機能不全、細胞の老化、幹細胞の枯渇、そして細胞間コミュニケーションの変化です(図2)。
さらに問題を複雑にしているのは、 それぞれの老化の特徴は相互接続しており、互いに影響し合っているということです(図3)。 実際、これらがあまりに相互に絡み合っているため、研究者によっては老化というものを4つの層のプロセスとして考えるべきであり、そしてその層はそれぞれが異なった生物学的尺度で進行していると主張する者がいるほどです。 いずれにしても、老化について考えるにあたり、こういった異なる特徴同士の関係を理解することは、老化関連の疾患を予防・治療するための効果的な介入の開発をするうえで役に立つことは明らかです。
これまで 老化の特徴を標的としたさまざまなアンチエイジング治療戦略が検討されてきました。そしてその多くは、複数特徴を標的としています(図4)。 ここで、そのうち5つの治療介入を概観します。そして各アプローチの現在のエビデンスから、どれが特に可能性が高いかを判断します。
身体運動は、多大なアンチエイジング効果を細胞レベルで示し、また老化の特徴 それぞれすべてに関係しています。 「老化の兆候に対する介入としての身体運動」に関しての研究は十分に確立されており、また臨床試験でも有望な結果が得られています。 現在進行中の注目すべき臨床試験では、アルツハイマー病、不安定歩行、認知機能、そしてPTSDに対する身体運動の効果が探索されています(表1)。
アンチエイジング戦略としての食事治療
近年、カロリー制限と断続的絶食という関連した2つの食事治療法が、長寿を司る基本的な代謝と細胞シグナル伝達経路に影響を与えることで、神経系の健康寿命を効果的に延ばすことが報告されています。 この手法は動物モデルでの成功が証明されているものの、カロリー制限は高水準の決意と自制心を必要とするため、人間に適用するのは難しい戦略です。 代替策として、「カロリー制限模倣物質」を用いることにより、その効果を模倣するという方法があります。 運動と同様、カロリー制限もよく研究されているアンチエイジング治療戦略であり、現在いくつかの臨床試験が進行中になっています(表2)。
アンチエイジング戦略としての代謝操作
細胞代謝に重要な役割を果たしていると同定されているものとして、哺乳類ラパマイシン標的(mTOR)シグナル伝達経路があります。これは、細胞の成長と増殖を活性化する重要な細胞プロセスと、栄養感知とを関連付けているものです。そこでラパマイシンなどの薬剤によるmTOR阻害が、加齢による虚弱から加齢に伴うサルコペニアにいたるまで、さまざまな適応症におけるアンチエイジング臨床試験で広く探索されています(表3)。
アンチエイジング戦略としてのセノセラピー
セノセラピーとは、老化や年齢関係の病態と関連付けられている細胞老化に対して、それを明確に標的とした潜在的な治療薬や手法を開発することを指します。 現在、様々なセノセラピー戦略が研究中です。 特に画期的な薬理学的戦略として、セノリティックスの使用が挙げられます。これは、複数の加齢関連疾患の原因となる老化細胞を選択的に除去できる低分子化合物です。 老化細胞をこのようにして標的にする方法は、すでに臨床試験で評価中になっています(表4)。
アンチエイジング戦略としての細胞のリプログラミング
細胞レベルで、時計の針を戻すことは可能なことでしょうか。 細胞のリプログラミングは、まさしくそれを行おうとするもので、最終分化した成熟細胞を人工多能性幹細胞に変換します。 この方法で細胞をリプログラミングすると、ミトコンドリア機能不全やテロメア短縮、エピジェネティクスの変化、ゲノム不安定性、細胞の老化など、いくつかの老化の特徴を効果的に改善できるようになります。 研究はまだ初期段階にあるものの、この手法は前臨床モデルでは有望視されています。
高齢化社会の課題に真正面から取り組むことで、アンチエイジング研究は、人々の老いの在り方を変え、わたしたちの全般的な健康を向上させ、より健康で活気ある国際社会を育む可能性を秘めています。
この有望でダイナミックなアンチエイジング研究分野についてさらに詳しく知るには、弊社の最新ジャーナルをこちらでご覧ください。
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現在の情報化時代においては、研究者や法務チーム、そして企業にとって、包括的な特許調査は極めて重要です。 タイムリーかつ費用対効果の高い方法で関連文献を参照できなければ、残念な結果を招きかねません。 とは言え、徹底的な特許調査を行うのは困難で時間がかかります。特にリソースが限られている場合はなおさらです。 幸い、知的財産(IP)検索用に設計された高度なツールやテクノロジーを使えば、この負担は軽減され、また効率も向上します。 本稿では、さまざまなツールや戦略を活用することで、包括的な特許調査と、特許に関するより良い洞察の獲得を加速させるための以下のコツを解説します。
知財リサーチャーは、検索の包括性を確保し、関連する情報を確実に捕捉するため、一般的には複数のデータベースを対象に検索を行います。 検索結果は、専門分野、文献網羅範囲、そしてインデックスの付け方における差異によって変わってきます。 複数のデータベースを横断的に検索する強力な検索方法を用いれば、包括性を高め、結果セットを理解し、重要な文献を見逃すことなく必要な情報を得られるようにクエリを絞り込めるようになります。
CASができること
CASでは、世界有数の出版社やデータベースが提供するコンテンツの包括的なコレクションを、単一のプラットフォーム、CAS STNext®としてサーチャーに提供しています。
CAS STNextには、科学者により精選された信頼性の高いCASの化学コンテンツをはじめ、特許情報および特許全文の包括的なコレクションや、化学や生物医学、薬学、知的財産そして工学の分野を網羅する130以上のグローバルなデータベースが統合されています。
サーチャーは、付加価値が付いたデータベース、フルテキストのデータベース、特定のテーマや機能に特化したクラスターを活用することで、それぞれの要件に合った包括的な検索方法を確立できます。
CAS STNextのユーザーは、CASが収集して精選したデータベースも利用できるため、精密検索が可能になっています。 例えば、化学の知的財産を調査する際、特定の分子に絞って検索することもあるでしょう。 しかしその際、マルクーシュ構造の特許請求項に隠された物質を考慮に入れているでしょうか。 知的財産を検索する際は、マルクーシュ構造を考慮に入れ、また十分に理解する必要があります。これは、一般的な省略記法の一種で、多くの構造的に類似した物質を簡潔に記述するために使用されるものです。
一般的な化学構造検索を行うと、異なる物質が何千もヒットしますが、検索しようとしている物質と正確に一致するのは一部に過ぎません。 特定の化学物質のデータベースに対して広範かつ一般的な検索を実行するときは、同一の化学物質に一致する結果のみが返されるため、マルクーシュ構造でカバーされる重要な特許請求項を特定できません。 CAS STNext内のツールを使用すれば、130万件以上のマルクーシュ構造を検索することができます。
EPOによると、包括的な特許調査には、179のデータベース内の13億件の技術レコードが使用され、毎月の特許検索で約6億件の文献が参照されています。 そこで、最新で徹底した特許検索を可能にするソリューションが必要とされています。 高度な検索プラットフォームが利用可能でも、そのデータベースの機能は制限されています。 結局、包括的な検索を行うには、検索に多くの時間を費やすしかないのです。
AIアルゴリズムは、関連性のある結果なのに今まで見逃されていたかもしれないものを活用するなど、検索方法の側面を補強することで、効率を向上させることができます。
CASができること
CASでは、独自にAI強化された先行技術検索技術を、CAS STNextにて提供しています。 弊社独自の特許類似性エンジンにより、指定された特許文献を開始点として、それ以前に発行された関連特許および非特許文献のリストが作成され、元の検索では登場しなかった洞察が提供されます。
CASのAI支援機能の例として、以下が挙げられます。ブラジルのNational Institute of Industrial Property(INPI)との提携により、CASは10個でセットになったAIベースアルゴリズムを開発しました。それらにより、高精度に順序付けられた先行技術の検索結果の統合リストが作成されました。 ブラジルINPIは、このようにAIベースのアルゴリズムを検索ワークフローに組み込むことで、特許検索の効率を次のように向上させることができたのです。
国内特許申請の処理の77%において、検索に要する時間が短縮された。
この処理のうち29%は、AIによって補完された検索結果外の調査が不要だった。
特許ファミリー内の関連特許は、異なる管轄区域や地域で出願されたとしても、優先権出願(基本特許)によって結び付けられています。最初に特許出願されたものが、そのファミリーの優先日になり、関連特許のクレームと仕様の基礎となります。
特定の特許ファミリー内の関連特許の領域と適用範囲を理解することで、特許権者、特許申請者、使用許諾取得候補者は、ライセンスを求めるべきか、特許の有効性に異議を唱えるべきか、そして長期の研究開発イニシアチブにリソースを配分するべきかなどについて、十分な情報に基づいた意思決定を行うことができるようになります。 ただし、特許ファミリーの完全な調査には時間がかかり、困難も伴います。 これは、複数の管轄区域にまたがる出願の複雑さをはじめ、複数データベース間のインデックスでの不一致、言語の壁、そしてそのイノベーション自体が科学的に複雑であることなどに起因します。
ただでさえ複雑なこのタスクの難易度をさらに高めているのが、請求項におけるばらつきです。 一般的には、特許出願で最初に提示される請求項は、特許ファミリー内のすべての関連特許で同一です。 ただし、出願人と特許庁とでやりとりする審査過程において、審査官からの異議に対応するため、あるいは先行技術を克服するために、請求項が修正されたり、狭められたりすることはあります。 その結果、同じ特許ファミリー内の関連特許の請求項でも、審査後は互いに異なるものになる場合があるのです。
こういった課題を克服するため、特許サーチャーは、往々にしてキーワード検索、分類検索、引用文献検索など含む、複数の検索テクニックを組み合わせます。 また、特許の検索で利用可能なデータベースや検索ツールのほか、さまざまな管轄区域における特許法や規制にも精通している必要があります。 さらに、特許ファミリー内の関連特許をすべて特定できるよう、特許サーチャーは弁理士や技術専門家と協力することもあります。
CAS STNextは、世界有数の特許ファミリーデータベースから信頼性の高いデータを提供します。そして、包括的な検索を確保するため、以下の機能も提供します。
CAS STNextでの特許検索に関する詳細は、こちらをご覧ください。
米国特許商標庁によると、2020年に米国で出願された特許は646,244件にのぼります。 特許サーチャーは、投資市場の拡大や新たな競合相手への対応の必要性を示す革新的な進歩を見逃さないよう、新しく公開された特許文献を常に把握しておく必要があります。
高度な検索ツールに、検索条件に一致する新しいエントリーが追加されたらアラートを発信する機能があれば、特許の現状を常に把握し、反復的な検索プロセスを減らすことができるようになります。
CASができること
STN IP Protection SuiteTMのソリューションには、保存されたクエリと一致する関連結果が登場したらアラートで通知するカスタムアラート機能があります。
さらに、STN IP Protection Suiteの一部であるFIZ PatMonでは、以下などの活動に対してもアラートを発信する機能があり、より効率的な特許の監視ができるようになっています。
こういった機能により、組織内の全ユーザーが自分の設定した検索条件でカスタマイズされたアラートを簡単に受け取れるようになり、その結果、時間のかかる手作業による特許チェックの必要性が軽減されます。
進化する知的財産検索の需要に対応し続けるのは、負担が重くなりがちです。 ここで遅れが発生すると、将来の投資決定に影響を与える競合他社の活動を見落としたり、会社の業績に影響を与える重要な文献を見落としたりすることになりかねません。
そんなときは、同じ業界の専門サーチャーと提携することにより、必要としているコンテンツや最も効率的に検索するツールにアクセスして、知的財産検索のニーズに対応した効率的な支援が得られるようになります。さらに、トレーニングや専門知識を通して、すき間があればそれを埋めることで、成功を確実にすることができます。
CASができること
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弊社のチームなら、他者では不可能な情報も明らかにすることができます。
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STN IP Protection Suiteに関する詳細は、こちらをご覧ください。
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知的財産権を保護しながらすばやく技術革新を行い、そして健全なビジネス判断を行うためには、徹底的な特許調査は不可欠です。
特許調査には、以下のメリットがあります。
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科学分野における徹底的な特許調査と現状分析は、相当な時間とリソースを要します。これは、イノベーションの量、速度、複雑さに加え、テクノロジー自体も急速に進化しているためです。
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知的財産検索の包括性と信頼性は、それを行うアナリストの専門知識や余力、そして検索ツールに制限を受けてしまうことが多々あります。 こういった制限は、コストがかかる遅延や、研究開発と知的財産戦略との間にギャップを生じさせてしまいます。 そこで、その分野で実績のある専門家と提携することで、知的財産調査活動を徹底的、一貫的、効率的に行うために必要な情報を確実に入手することができます。
課題はもうひとつ、研究開発のレベルでも存在します。研究者は、往々にして知的財産検索にかける時間やアクセス、または経験が不足しているということです。 機会を最大限に生かし、知財イニシアチブの合理化を図るためには、研究開発チームのメンバーは、組織内特許アナリストの洞察にアクセスできるようになっており、また知財に関するインサイトを研究開発サイクルを通じて活用できるようにしてくれるツールも使えるようになる必要があります。
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特許の現状調査の加速化 化学やライフサイエンスの分野は絶え間なく変化しているため、ビジネス上の意思決定のために市場の勢力図を見極めるには、時間は重要です。 貴組織の技術、用語、そして業界に精通した知的財産検索の専門家パートナーと協働することで、この調査プロセスがスピードアップします。
このパートナーには、科学検索と知財検索のために設計された包括的なコンテンツとワークフローソリューションがあること、そしてそれを使って包括的な検索の遂行と実行可能な洞察が形成できることが望ましいでしょう。
研究開発の支援 パートナーは、貴組織が従事する分野でのすき間、リスク、または機会などに関する洞察を貴組織が活用できるようにすることで、有望な機会を特定できるよう支援するべきです。 さらに、信頼できるパートナーは、より効果的に検索を準備し、結果セットを利害関係者と共有し、変化を先取りできる監視プログラムを設定したりなどの支援を行うことができるようでないとなりません。
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貴組織の研究分野の専門家であること そうすれば表面的なレベルだけでなく、その分野で価値の高い洞察を得ることができます。
ソース情報の包括的なコーパスに接続させてくれること 知的財産検索の価値は、その情報のソースと、関連性のある結果を的確に絞り込む能力に左右されます。 理想的なパートナーは、この作業の重要性を理解したうえで、広範囲にわたる関連情報のグローバルなコレクションにアクセスできるよう支援してくれないとなりません。
科学知的財産検索を念頭にツールを設計・提供すること 専門知識やコンテンツにアクセスできるだけでは、達成できることにも限りがあります。 まず、そのコンテンツにアクセスするのに使用する技術こそ、特許調査の効率を大幅に向上させることができる部分なのです。 理想的なパートナーは、貴組織のワークフローを強化し、最新の関連コンテンツへのアクセスを可能にし、効率的で徹底的な検索と複数チーム間の洞察の共有を可能にする機能や性能を備えた知的財産検索ツールを提供する必要があります。
特定のパートナーとの提携や、特定の特許調査用ツールを決めてしまう前に、最良の結果を得るためには、必ず以下の質問をするようにしましょう。
知財調査のための理想的なパートナーをお探しなら、是非CASをご検討ください。弊社は、貴組織が求める能力とツールを提供します。
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検索結果の信頼性は、アクセスできるデータの信頼性に依存します。 CAS STNextⓇ(STN IP Protection SuiteTM内のソフトウェア)なら、特許アナリストは、強力な精密検索・分析ツールと共に、最も包括的でグローバルなデータベースのコレクションと、科学者が収集したコンテンツおよび特許情報を活用することができます。
医薬品やライフサイエンス、化学工学、機能性材料、そしてパーソナルケア製品など、複数の領域にわたる知財検索は、CAS STNextを利用することで、より信頼性が高く、完全で、また洞察に満ちたものになります。
CASのように科学と知財の知識を持つパートナーでチームの専門性を拡張すれば、知識のギャップを埋めることができます。それにより、特許調査の戦略を立てるときに役立つだけでなく、貴組織の科学分野特有のニーズを満たす特許調査ツールやデータコレクションを開発することもできます。
また、STN IP Protection Suiteのユーザーは、特許の準備・出願、訴訟、知的財産の金銭的価値の設定、競合分析、製品と安全性のモニタリング、ホワイトスペース分析、そしてその他の特許プログラム活動のための検索方法の管理経験を持った、信頼できる知的財産検索の専門家の支援も受けることができます。
特許調査の結果の検索とレビューにかかる時間を短縮。貴組織の業界向けに構築されたツールやデータベースには、コンテンツや検索、そしてワークフロー機能が含まれているので、最初の検索から意思決定までが加速化されます。
例えば工学分野の発明を分析する場合、粘度、電気伝導性、光度などの特性は、しばしば範囲によって表されます。 このため、関連特許の精密な検索の実行は困難になります。 STN IP Protection Suite内のCAS STNextⓇ の数値特性検索では、必要に応じて単位も変換したうえで、数値や範囲を細かく入力することができます。 このように特定技術に特化した高度な検索機能を備えたツールにより、関連性のある情報を見つけるプロセスが迅速化します。
グローバルな特許状況を効率的に監視する
訴訟や侵害は、可能な限り回避、予測し、必要な場合には効果的に対処したいものです。 STN IP Protection Suite™の一部であるFIZ PatMonなら、業界における特許の変化を常に把握することができ、競合他社の動向を追跡して知的財産ポートフォリオを保護することができます。 包括的なモニタリングから具体的なフィルタリングまで、その高度なアラートオプションにより、新たな出願や活動の動向を注視できます。
CASなら、イノベーションや研究開発、または知財保護に関する重要な意思決定を行う際に、必要な情報にアクセスできるという安心感が得られます。
さらなる情報をご希望であれば、 こちらのリソースもご覧ください。
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