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グローバル傾向の追跡:グラフェンの可能性を追う

Hexagon shaped overlay

グラフェンは奇跡の物質、現代化学のスーパーヒーローと謳われています。グラフェンが注目を集める理由は、そのユニークな特性にあります。グラフェンはわずか原子1個分の厚さで、鋼鉄の200倍以上の強度を持ち、軽量で柔軟性があり、熱と電気の両方を効率よく伝導します。また、ヘリウム原子でさえ通過することのできない完全な不浸透性のバリアを作ることができます。

この特性プロファイルにより、グラフェンベースの材料は、複合材料、ウェアラブル電子機器、センサー、半導体、さらには医療機器など、さまざまな需要の高い用途に使えるものとして注目されています。グラフェンは、既知の物質の中で最も高い表面積対体積率を有しているため、大きさと重さが重要な制約となるバッテリーや太陽電池などの用途で価値をもたらします。

2004年に最初に分離されて以来、研究者たちはグラフェンの類い稀な可能性を現実のものとするため、最初の商業的応用を開発するべく世界的な競争に挑んでいます。この20年間のデータを見ると、この分野での注目すべきイノベーションのパターンが浮かび上がっています。その要約は前回のホワイトペーパーに記載されています。このホワイトペーパーは CAS と国立科学図書館、中国科学院が共同で出版したものです。ここでは研究とビジネスの視点からの状況の最新情報の要約を提供します。

グラフェン研究の状況はどのように進化してきたのでしょうか?

グラフェン関連の科学出版物の世界的な傾向

2010年以降のグラフェン関連の研究出版物を調査すると、いくつかの傾向が浮かび上がってきます。まず、全般的に研究発表の数が劇的に増加しています。この間に発表数は5倍に伸びており、グラフェンの商業化に向けた熾烈な競争を反映して、世界中でグラフェンへの興味が爆発的に高まっています。

この成果を国別に分類すると、さらに詳細な傾向がわかってきます。発表されている研究のほとんどは、中国、米国、韓国、日本、インドの5カ国からのものとなっています。これらの国々のデータを分離すると、この分野の指導権の進化が見えてきます。例えば、米国と日本は2010年以前に基礎研究を行っている初期のリーダーとして台頭し、その後も生産性はだいたい同じレベルを保っています。

しかし、その頃に韓国と中国が研究に参入してきたことで急激な成長が促され、そうした状態は今も続いています。現状では中国がグラフェンの IP を支配しており、2010年以降の特許出願の60%以上が中国のものとなっています。他の国に遅れてグラフェン競争に加わった国からすれば、この急成長は特に印象的です。

インドの発表数の増加も注目に値します。インドは市場参入から5年で、日本のグラフェン関連論文の総数を追い抜きました。この傾向は将来のリーダーシップを示唆する可能性があります。特化分野においてより確立された国々と競い合うべく、新興市場が台頭しているという全体的な傾向を反映しています。

グラフェン競争の勝利者は?

グラフェンのグローバル市場の規模は、2016年には3200万ドルだったと推定されており、2022年までには2億ドルを超えると予想されています(Zion Market Research)。これは、5年間で約35.0%の CAGR(年平均成長率)となります。しかし、グラフェン競争で誰が勝利するかはまだ分かりません。

研究の生産性だけで見れば、現在は中国がグローバルなグラフェン状況を支配しています。しかし、その根底に流れる傾向を調べると、重要な文脈が見えてきます。中国の特許はほとんどが大学の所有になっており、中国でのみ出願されています。それとは対照的に、ドイツ、米国、韓国、日本などの国のグラフェン関連の特許出願は定期的に他の主要な世界市場に拡張されており、イノベーションの商業化でより高い成功率を収められる状況にあります。

多くの研究があり期待も高いとはいえ、いくつかの障害がイノベーションを阻み、この物質の可能性の完全な実現を妨げています。最大の課題は、主要な応用に求められる品質条件を満たす、コスト効率の高い大規模生産方法の開発です。この課題への注目は、ここ数年でグラフェンの製造および加工に関連する特許活動の増加によって示されています。グラフェンは、ナノチューブやグラファイトなど、他の新興カーボン技術との競争にも直面しており、これらはより広範な用途において商業的に実現可能である可能性があります。

全体として、グラフェンは依然として幅広い業界の研究者や戦略家から高い関心を集めています。しかし、商業化の前に立ちはだかる障害のため、当初の明るい期待は曇りがちです。グラフェンの準備と生産方法に関する状況を注意深く監視する必要があります。大きな進歩に伴って知的財産と応用例の新たな急増が引き起こされ、幅広い分野に混乱が生じる可能性があるからです。

グラフェンや、御社の事業にとって重要なその他の新しい技術分野について、より詳しくモニタリングする必要がありますか?