次なる成長の波 - リチウムイオン電池のリサイクル技術

Zach Baum, Information Scientist, CAS
lithium ion battery recycling

10年ちょっとほど前のNature誌に掲載された論文に、「リチウムは新たなゴールドになるか」という問いかけがありました。 それはリチウムがリチウムイオン電池(LIB)に使用されていること、その反面埋蔵量と需要に不確実性があることに基づいた考察でした。 そして現在、リチウムイオン電池をリサイクルすることで生成され、豊富な金属を含む「黒い塊」は、今後リチウムイオン市場の新たな「ゴールド」になる可能性があります。 世界のLIB市場は合計で410億ドルの価値があり、2030年までには1,160億ドルを超えると予想されています。

2040年には、世界中で販売されるすべての自動車の58%が電気自動車になると予想されており、そこから生じる廃棄物の総量は800万トンに達する可能性があります。 それにもかかわらず、世界でリサイクルされるLIBは5%程度のみであると考えられており、環境と地球の鉱物埋蔵量に憂慮すべき影響を及ぼしています。

弊社のホワイトペーパーで解説しているように、これはLIBのリサイクルは、電池材料の金銭的価値の変動や、電池設計と材料そしてリサイクル工場内での技術的合致の欠如(そしてそれに関連したリサイクルに要する人件費)など、さまざまな要因によって制限されているためです。 リサイクルのメリット(原材料の安定確保、安全性、環境のメリットを含む)の収益化の欠如、および世界中の多くの地域におけるリサイクル規制の欠如も一因となっています。

リチウムイオン電池のリサイクルという挑戦に、我々は準備できているのか

リチウムイオン電池リサイクルには、挑戦の反面かなりの成長機会も潜んでいます。 たとえば、2019年の世界的生産量のうちリサイクル可能と推定される50万トンのバッテリーからは、次の原材料を回収することができます。15,000トンのアルミニウム、35,000トンのリン、45,000トンの銅、60,000トンのコバルト、75,000トンのリチウム、そして90,000トンの鉄。これによって、原材料の安定確保に加え、大きな経済的および環境上の利益がもたらされます。

弊社のホワイトペーパーでも論じているように、リチウムイオン電池のリサイクルへの関心は急速に高まっています。これは「黒い塊」に対する一般的な関心が急上昇していることからも明らかです。 CASコンテンツのコレクション™により、リチウムイオン電池のリサイクルに関する過去のジャーナルや特許公報に対する独自の考察が得られるようになりました。それにより、充電式電池の新たなトレンドの発見や、使い捨て材料の転用、そして将来の機会の予測などが可能になっています。

現在のリチウムイオン電池のリサイクル方法

大抵の場合、LIBの処理には湿式製錬法と乾式製錬法の組み合わせが用いられています。ただ、ダイレクトリサイクルの人気も高まっています(これについては後述)。 湿式製錬では、溶液(主に水溶液)を用いて電池材料から金属を抽出および分離します。 乾式製錬では、熱を使って電池材料に使用されている金属酸化物を金属または金属化合物に変換します。 ダイレクトリサイクルとは、陰極素材を取り除いて再利用または再生する方法です。

LIBリサイクルの3つの方法
図1. LIBリサイクルの3種類の方法の概要 


リチウムのリサイクル分野で増加している研究トレンド

世界の科学出版物の発行部数は過去10年間で着実に増加している一方、リチウムのリサイクルを題材にした出版物の年間増加率(32%)は、科学出版物全体の増加率(年間4%)をはるかに上回っており、関心が台頭してきていることが窺えます。

この結果と符合するように、LIBリサイクルの3つの方法すべてを含む出版物が過去10年間で全体的に増加しているほか、近年では大幅に増加しています(図2)。特に、中国がジャーナルと特許の両方で圧倒的多数を占めています(出版物の約90%、図3)。

リサイクル方法別の出版物の発行部数、2010〜2021年
図2. リサイクル方法別の出版物の発行部数、2010〜2021年


 

国/地域別のリチウムイオン電池リサイクルの出版物、2010〜2021年
図3. 国/地域別のリチウムイオン電池リサイクルの出版物、2010〜2021年


具体的に用いられるプロセスに関しては、湿式製錬が2015年以降乾式製錬を大幅に上回っており、また同様の動きとしてダイレクトリサイクルも最近大幅に増加しています(図2)。 また、これまで研究が少なかった部分に対する研究への取り組みも多く見られます(図4)。例えばLIBコンポーネント(これは包括的なリサイクル管理の視点の現れの可能性を示唆しています)、そしてLIBの分解などについてです。 これは、リサイクル可能な材料の量の最大化という点では望ましいことであると言えます。

非陰極材料の回収とリサイクル工程の最適化を研究している出版物
図4. 非陰極材料の回収とリサイクル工程の最適化を研究している出版物


世界の電池リサイクル能力

現在のLIBリサイクル能力は東アジアに集中しており、中国が世界のリサイクル能力の半分以上を占めています。残りはほぼヨーロッパです(図5)。 今後リサイクル能力は現在提案されているLIBリサイクル施設によって約25%増加します。確定している新リサイクル能力のほとんどは北米に集中しています。 現在リサイクル能力がある場所は、LIBリサイクル規制の影響と一致している一方、将来のリサイクル施設の場所は、経済的要因と沿った形になっています。

設置済みおよび計画中の世界のリチウムイオン電池リサイクル施設、2021年11月現在
図5. 設置済みおよび計画中の世界のリチウムイオン電池リサイクル施設、2021年11月現在

 

世界のリチウムイオン電池のリサイクル規制

全体として、リチウムイオン電池のリサイクル規制は増加傾向にあり、多くの国がリサイクル方法の研究に資金を提供しています。さまざまな国でリチウムイオン電池のリサイクル法が制定されている中、中国と欧州連合はLIBリサイクルに関する包括的な規制フレームワークを有するか、または制定中です。 リチウムイオン電池リサイクル管理に対する関心の高まりと相まって、世界のリチウムイオン電池の使用が増え続けている中(電気自動車、携帯電話などのため)、これらの調査結果は将来にとって心強いものとなっています。

リチウムイオン電池リサイクルの研究トレンドの概要については、CAS Insights Reportをお読みください。世界的な規制と経済的利益を評価し、LIBリサイクルの現在および将来の世界的な状況についての洞察を提供します。

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