ファーマのデータ管理 - ダークデータに隠れたブレークスルーを発見する

Jennifer Sexton , Director/CAS Custom Services

Abstract circular data tunnel

データリッチ、インフォメーションプア - 製薬業界のこの呪縛は元に戻せる

製薬業界では、前臨床試験から販売に至るまで、膨大な科学情報とビジネス情報が生成・保持されています。 しかし、そういった文書は、通常サイロ化されて保管されているため、企業のストレージ予算の約52%を占めるほどの膨大な年間保管費用を要すようになっています。

こういったダークデータの存在に気が付いていなかったり、その潜在能力を最大化させる方法のノウハウがない企業は、必然的に「データリッチ、インフォメーションプア」(または「DRIP」)という状況に陥ります。 この概念は、大量のデータを保有しているにもかかわらず、価値ある情報を生み出し、競争上の優位性を獲得するプロセスを持たない組織を表現するものです。

デジタル化が推進されてきたことで、企業では、ダークデータが生成されるのを防ぎ、また現在潜在している情報をエビデンスに基づいた洞察へと効果的に変えるのに役立つ、高度な組織ツールを導入できるようになりました。 しかし、膨大なデータをクリーニング、整理、そして活用するのは、圧倒される大仕事になることもあります。 外部のデータ専門家を活用すれば、カスタマイズされたステップバイステップのアプローチが提供されるため、製薬企業のナレッジマネジメントシステムが新たな次元に引き上げられます。

デジタル化とハーモナイズ - ダークデータの混沌に構造をもたらす

製薬会社は、ダークデータを取り出して利用することで、研究開発の投資の方向づけや、製剤の最適化、生産ボトルネックの特定、そして品質システムや品質管理の評価などに役立てることができます。 ところが、ネイチャー誌に掲載された "Scientists losing data at a rapid rate" という記事では、科学データの約80%が20年以内に利用できなくなると推定されており、適切な情報の検索が危うくなってきています。

バインダーや引き出し、セキュアでない仮想プラットフォームなどに今も蓄積されているダークデータは、さまざまな形態で、しかも多くの場合、他とは切り離された状態で、存在しています。 年月の経過に伴いチームが変容すれば、企業の知識もすぐに散逸し、取り出すことも困難になっていきます。 レガシーの文書をデジタル化し、すべての情報を単一のナレッジマネジメントプラットフォームに集めることで、データ取得の効率が高まり、データ管理のタスクに割り当てるリソースが減り、そして組織内で経験の共有が改善されます。

明らかなメリットが得られた例として、科学者間の情報共有を容易にすることで研究室の安全性を向上させることを目的とした、Pistoia Alliance Chemical Safety Library のローンチが挙げられます。

専門知識はデータのデジタル化とハーモナイズに役立つ
潜在するデータを検索・活用可能な資産に変えるには、文書の適切なデジタル化と、信頼できる品質チェック、そしてそれを安全に企業のエコシステム統合できる専門知識が必要です。 優れた外部パートナーであれば、あらゆる要素を理解・習得し、貴社のニーズに合わせた独自のデータコレクションの構築を支援することができるはずです。

開発が廃止された医薬品から市場での成功談まで、貴社の過去には貴重な教訓があふれています。 このダークデータを構造化しそしてハーモナイズさせることで、データパートナーは、潜在する情報をエビデンスを基にした洞察に変え、無限のイノベーションの機会へとつなげることができます。

データ管理でパートナーシップを組むメリット

  • 物理的な文書の適切なデジタル化。これには、科学文献、報告書、ラボ日誌、画像、映像などをデジタル形式に変換することも含まれます。
  • デジタルコンテンツのハーモナイズ。一貫した用語や略語、そして形式を使用します。
  • 確認されたデータの品質、正確性、整合性によってナレッジマネジメントプラットフォームの強固な基盤を確保します。
  • カスタム設計された検索ツールによってデータのアクセスしやすさと取得が向上します。
  • 長期的なデータ保守と管理の確保。これは、カスタマイズされた取得戦略を実施することで達成されます。

分析して最適化する - データの中のパターンや機会を見つける

ダークデータを再度使えるようにし、そしてナレッジマネジメントのプラットフォームを構造化することで、企業の価値を大きく拡張できます。 膨大なデータセットを解析することで、今まで見えなかった傾向を特定することができます。 過去の創薬の研究開発や製剤データまたは製造方法などからパターンを明らかにすることで、時間を大幅に節約し、バリューチェーン全体のプロセスを改善し、そして重要なビジネス上の意思決定をしやすくなります。

Mana.bio社のデジタルトランスフォーメーションの取り組みは、高品質にキュレーションされたデータと技術の統合を通じて、製薬会社がいかに独自の社内プラットフォームやデータベース、そしてワークフローの成功を最適化することができるかを例示しています。 この取り組みで、Mana.bio社は同社独自のデータベースを更新し、薬物送達AIエンジンを強化することで、分子データの取得と準備に割り当てるリソースを70%削減できるようになる見込みです。

このようにして、ナレッジマネジメントのプラットフォームの精度と価値が向上するのに伴い、トレンドを自信を持って特定し、次の発見に向けて動き出すことができるようになるのです。 パターンを発見することが、従来よりも簡単に、よりすばやく、そしてやりがいのあるものになるでしょう。

外部のパートナーが、いかに製薬企業のデータ分析と洞察の生成の改善に役立つか
外部パートナーは、包括的で完全に機能するデータプラットフォームを設計する専門家であり、またデータの状態に関する完全な視野を提供できることが求められます。 そういったデータの専門家と協力することで、製薬企業は以下のことが可能になります。

  • アナリティクスと洞察のためのデータ基盤を確立する。これには、強力なフレームワークとデータの整合性も必要となります。
  • 知識のギャップを特定し、そして、そのギャップを埋めるためのプロジェクト機会も特定する。
  • データの可視化やアナリティクスに関するサポートを手配して、パターンとトレンドを明らかにする。
  • 追加コンテンツで内部データを拡張し、補完する

つなげて、そして革新する - 的確な情報を適切な人材に

製薬会社には、医療の革命のために尽くす、聡明で知識豊富な人材が多く集まっています。 ところが、多くの場合、社内の専門家同士のコミュニケーションは分断されているため、成長の機会が危機にさらされ、イノベーションの進展も影響を受けます。 デジタル化の時代において、企業はデータ管理などソーシャルテクノロジーを活用することで、労働者の生産性を20~25%向上させることが可能だと報告で示されています。

患者に最高の医薬品を提供するには、研究開発、業務、品質管理から、IT、マーケティング、財務に至るまで、各部門が協力して取り組む必要があります。 全社的なナレッジマネジメントシステムを活用することで、データや過去の経験、そしてベストプラクティスといった事を効率的に共有できる、セキュアなワークスペースをチームに提供することができます。

クラウドベースのプラットフォームなら、リアルタイムのコラボレーションのレベルを底上げするため、研究者、エンジニア、技術専門家が情報をすばやく検索・取得できるようになります。これによりチームは、より速いビジネスの変更決定に必要なデータのアクセシビリティと共同作業環境が得られます。

外部のデータパートナーが、いかに製薬企業がつながり、そして革新するのに役立つか
高度なナレッジマネジメントシステムの専門家と提携することで、製薬会社のリーダーは以下のことが可能になります。

  • 全社規模の、そしてすべてのチームに適したクラウドベースの共有ナレッジマネジメントのプラットフォームを作り上げる
  • ユーザーのアクセス制御を強化し、サードパーティ製ソフトウェアの使用を制限することで、データの安全性を確保し、侵害を最小限に抑える
  • セキュアなチャネルを通じて、秘密情報や機密情報の安全なやりとりを促進する
  • 分野間のブレーンストーミングとコラボレーションを促進して、画期的なビジョンを拡大させ、革新を加速させる。

ナレッジマネジメントとダークデータは、製薬イノベーターに不可欠である

堅牢で安全なナレッジマネジメントシステムは、製薬業界では長い間、「あれば便利」程度にとらえられてきました。しかし今や革新的で協力しあう研究には、これは不可欠な基盤となっています。 以前は利用できなかったダークデータも、全社規模のインターフェースで構造化およびハーモナイズされることで、成長の機会を求める製薬企業にとって価値ある洞察に早変わりします。

デジタル化が今後も進んでいくに従い、製薬業界でダークデータとコグニティブツールを活用することは、医薬品開発分野においてイノベーションをリードし続けるためには必要なことになってきています。

デジタルトランスフォーメーションやデータ管理についてより詳しく知るには、CAS Custom Services のケーススタディをお読みください。