科学関連産業における特許性の評価

Scientists Working on Computer In Modern Laboratory

イノベーションを保護するうえで、最も重要な手段のひとつが特許です。 もし特許の取得を目指しているか検討しているなら、注意するべき点がいくつかあります。

科学イノベーションの特許性には、その技術の複雑さや、徹底的な先行技術調査を行うことの困難さ、そして絶えず変容するこの産業の性質などからくる、固有の課題が存在しています。 本記事では、科学関連産業における特許性の評価に存在するそれら固有の課題を明らかにしたうえで、それらに対処するためのベストプラクティスと、CASがどのようにお手伝いできるかを紹介します。

科学イノベーションは複雑で重層的。特許サーチの難易度も上がります。

技術が複雑であればあるほど、特許性評価を行う際に検討するべきこと、そして照会するべきことが多くなります。 それは、重要な情報が、特許や一般的な非特許文献以外のさまざまな情報源に隠されていることがあるためです。先行技術の全体像を把握するためには、そういったところも掘り起こす必要があります。

RNAのイノベーションの例をみてみましょう。

特許性評価を実施する際には、ナノ粒子の送達、リガンド、複合体、そして化学修飾の種類などを考慮に入れる必要があります。 単純にBLAST検索やモチーフ検索で関連配列を見つけるようなわけにはいかないのです。 時間をかけて進化してきた技術を特定し、そして誰が関与しているかを把握する必要もあります。

企業は、公開されている技術を特定し、リスクを最小化し、より早くイノベーションを実現し、そしてデューデリジェンスを早期に、そして徹底的におこなわない場合に発生するリスクを回避したいときは、CASのソリューションを利用しています。

知的財産の藪に注意

知的財産 (IP) の藪 (やぶ) (= intellectual property entanglement (知財の「もつれ」)) とは、ある企業の知的財産権やFTOが、他者が所有する既存のIPにより制限される状況を指します。 この藪が発生する原因は、技術の融合、クロスライセンス契約、研究での協力、あるいはM&Aなど、いくつかの理由があります。 知的財産の藪は、特に医薬品や機能材料といった規制が厳しい業界では、発明の特許性に大きな影響を及ぼす恐れがあります。 知的財産の藪は、企業が技術革新をし、商品化し、そして収益を生み出す能力を左右する可能性もあることから、それを特定して管理することは重要です。

関節リウマチの大型治療薬、Enbrel の例を見てみましょう。 この薬は当初 Immunex Corporation社により開発されました。しかしその後、同社はアムジェン社に買収されます。 ところが、Enbrelの原特許は Immunex社と、のちにファイザー社に買収されたWyeth Pharmaceuticals社が共同で所有していました。 このため、Enbrelの特許権をめぐり、アムジェンとファイザーの双方が特許の所有権を主張し、複雑な法廷闘争に発展したのです。 この訴訟は最終的に2017年に和解が成立し、アムジェンはEnbrel特許の完全な所有権を獲得しました。

こういった知的財産の藪にさらに複雑さをもたらすのは、バイオシミラーの開発です。 バイオシミラーの製造には細胞株や製造工程の利用が必要で、これらも既存の特許で保護されている場合があるためです。

絶え間なく変容を続けるバイオテクノロジー業界の特許状勢に、どう対応していくべきか

新たな特許が日々出願され、特許の状勢は常に変化を続けています。 例えば、CAS社内の専門家によれば、RNAのイノベーションでは過去10年間に10,000件以上の特許が発行されたと推定されています。 こうなると複雑な文書や文献を整理することがますます難しくなり、イノベーターにとっての課題となります。 そこで業界内で、「このペースにどうやってついていくべきか」といった声が多く上がるようになってきているのです。

徹底した最新の特許性評価への第一歩は、信頼できる知的財産検索ツールに投資すること

検索ツールは、定期的に新しい特許や非特許文献で更新されるものを選ぶ必要があります。 現在、多数の検索ツールが市場に出ています。しかし、すべてのツールが同じ機能や検索結果の品質を提供しているわけではありません。 オープンソースの検索ツールの中には、科学業界では必須である検索アルゴリズムのカスタマイズ機能がなかったり、またはもっとも関連性の高い、最新の情報を提供しなかったりするものもあります。

CASでは、さまざまな業界における潜在的な知的財産の藪に対処できるよう、広範囲なソリューションを提供しています。 例えば CAS SciFindern や CAS STNext などCASの科学技術ソリューションでは、お客様が潜在的な知的財産の藪を特定し、そして複雑な競合環境を切り抜けられるよう、特許や科学文献、そして規制データなど豊富な情報へのアクセスを提供しています。

さらに、CAS IP ServicesSM では、FTOの評価、特許性の評価、そして特許ポートフォリオの分析など、知的財産に関する特定の課題にお客様が対処できるよう、カスタマイズされたソリューションを提供しています。 これらのサービスでは、CASの特許調査と分析における高度な専門知識のみならず、広範囲な特許専門家のグローバルネットワークも活用されています。

CAS STNext® の詳細はこちらをご覧ださい。

検索方法が有効かどうかは、データソースに左右される

化学やバイオテクノロジーのイノベーションで信頼性の高い特許評価を行うには、一貫性のない用語や不完全な索引付けは脅威となります。 化学式、構造、生物学的配列、修飾などで捕捉されないものがあると評価の漏れにつながります。 しかし、これらの情報を異なるデータソースから効果的に、そして包括的に取得できるような単一の検索方法というものはありません。

そこで、関連するすべての先行技術を特定し、徹底的な特許性評価を行うためには、包括的で適切に構造化されたデータベースをもとに構築された戦略と、効果的なツールが必要になります。

CAS コンテンツコレクションTM なら、こういった課題を念頭に置いて構築されているため、化学物質や配列、そしてマルクーシュ構造など特許文書や非特許文献の複雑な側面でも検索可能、そしてアクセス可能になっています。 

CAS STNextは、130以上のグローバルな高品質データベースを単一のインターフェースで検索できる、信頼性の高いソリューションです。

技術だけでなく地域も考慮して検索する

検索は、適切な地理的範囲内でも行えるようになっていることが非常に重要です。 文献を検索する際、その地理的範囲が広すぎると、ふるいにかけなければならない資料も膨大になります。 逆に検索範囲が狭すぎると、関連文書やつながりを見逃してしまう可能性があります。

では、検索の適切な地理的範囲は、どのように決定すればよいのでしょうか。 大体、検討中の評価の種類に応じて、適切な地理的範囲も変わるかもしれないのです。 例えば、以下の場合を考えて見ましょう。

  • 特許性評価の場合。特許性を評価するときの先行技術調査の目的は、既存の関連先行技術でイノベーションの新規性に影響するかもしれないものをすべて見つけることにあります。 もしそういった情報が見つかったら、研究開発戦略が頓挫する可能性すらあります。 米国では、世界中のすべての先行技術が特許性判断の対象となります。
  • FTO検索をする場合。有効な特許のクレームを調べる際、そのイノベーションがどの地域で展開・販売されるかによっては、特許の検索方法も変わってきます。 CASのFTO調査戦略でも、貴組織がどこで事業を行い、そして発明を販売したいかによって変わります。 貴組織の商業化戦略によっては、検索対象の範囲を絞って、主要な特許庁に限定することもできます。 逆にグローバルな事業展開の場合は、より広範な調査を行う必要があります。

まとめ

機能材料やファーマなど、知的財産の状勢が進化し、そして急激に変化する科学業界では、最新かつ包括的な知財検索ツールは不可欠です。

STN IP Protection SuiteTM なら、科学知財を保護し、そして徹底的で包括的な先行技術調査とFTO検索を行うのに必要なツールが含まれています。 そして特許と特許以外の情報源から科学者が集約、収集、そして翻訳した比類のないコンテンツにアクセスできます。 モニタリングツールと専門的なテクノロジーを通じて貴組織のリスクを軽減し知財資産を保護することで、競合相手の一歩先をいき、貴組織の発明を保護することができます。 また、追加のサポートが必要になったら、CASの知的財産のエキスパートが貴組織の知的財産チームの延長としてお手伝いいたします。