海面上昇と気候変動が世界中のコミュニティーに影響している現在、工業国はアウトプットを管理し、環境への影響を削減するプロセスを探しています。1990年代から躍進を遂げているアプローチにグリーンケミストリーがありますが、これは「有害物質の使用や発生を削減或いは完全に無くすことができる化学製品やプロセスの発明、設計、使用」に注目した科学分野です。
1998年、ポール・アナスタスとジョン・ワーナーが共著の中で、化学製造による人体と環境への影響を削減する様々な方法など、 グリーンケミストリーの基盤を形作る12の原則を設定しました。しかし、グリーンケミストリーの実行導入は、採算性の意味で正当化できないとする業界もあります。
製薬業界で波を起こす
ACS Green Chemistry Instituteは、「グリーンケミストリーにおけるあらゆる研究とエンジニアリングが進んだが、主要な化学ビジネスは、いまだにその技術を完全には組み込んでいない」と言っています。現在、有機化学物質の98%が今だに石油から作られています。「グリーンケミストリー運動が継続的に政策、ビジネスプラクティス、消費者の意見などに影響を与えて行く中で、企業は収支決算を維持しつつ、「グリーンになる」新たな方法を模索しなければなりません。これは、特に製薬業界に言えることです。
2005年、ACS Green Chemistry Instituteは、「製薬業会におけるグリーン化学とグリーンエンジニアリングの統合を触媒しつつ、イノベーションの促進するために、ACS GCI Pharmaceutical Roundtableを形成しました。ラウンドテーブルの参加者には、アストラゼネカ、バイエル、イーライリリー、グラクソ・スミスクライン、メルク、ノバルティス、ファイザー、サノフィ、武田などが含まれていました。
特に製薬業界は歴史的に実績のある製造法や研究方法を変えることに抵抗を示してきたので、これほど多くの有名な製薬会社が関わっていることで期待も高まります。グリーンケミストリー原則の採用は、規制問題、知的財産の要請、フェイルファスト要件などですでに困難を抱えている業界にとってはさらなるハードルになり得ますが、製薬会社はグリーンケミストリーによる効率と経費削減に気付き始めています。
製薬R&Dに、グリーンケミストリーの原子経済の原則を適用することで(例えば、プロセスで使用される全ての材料を最終製品に最大限組み込めるように合成方法を設計するなど)、副産物が減り、保管や廃棄コストが最小限に抑えられます。溶媒もコストに大きく影響します。溶媒は、標準バッチの化学オペレーションの50%〜80%にも上り、エネルギー消費の大部分を占め、プロセスの安全上で最大の懸念事項になるためです。
例えば、メルクとコデクシスは、糖尿病薬のJanuvia(ジャヌビア)の新しい合成法を開発しましたが、それによる恩恵で 「既存の設備で56%の生産性向上、全体的な生産量が10%〜13%増加、そして廃棄物産出は全体で19%減りました。」 2010年、米国環境保護庁はこれに対し、Greener Reaction Conditions Awardを授与しました。
グリーンケミストリー運動の先端を行く
どの製薬会社でもその根本目標は、革新的な医薬品を提供して世界中の命を向上させることにあります。この目標を持続可能で環境に優しい方法で達成するため、製薬会社はその分野で最新の研究にアクセスする必要があります。従来の合成プロセスを超えたイノベーションが必要なのです。
1990年代後半ごろ、そしてアナスタス博士とワーナー博士の革新的な共著が出版されたのと時を同じくして、薬剤の設計と合成法におけるグリーンケミストリーの利用に関する研究が劇的に増え始めました。今では、科学文献にはこの分野に関する210万本を超える雑誌論文が含まれています。
他の新興分野にも言えることですが、科学文献における一貫性のない用語の使用は、最新の発見を利用したい場合の障害になります。製薬会社は、持続可能性を目指して合成方法を最適化するにあたり、研究者が簡単にグリーン反応、試薬、溶剤、触媒の場所を確認できる情報ソリューションを必要としています。
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