マニュエラ・ヨルグは、1998年にCiba Specialty Chemicals社(スイス)の化学ラボ技術者見習いとして経歴をスタートさせました。 業界で数年経験を積んだ後で、北西スイス応用科学大学(University of Applied Sciences Northwestern Switzerland)で化学の学士号、スイスのバーゼル大学(University of Basel)で同じく化学の修士号を取得しました。 2014年にモナシュ大学(オーストラリア)で医薬品化学で博士号を取得、そして2015年にはCAS Future Leaderに選ばれました。 現在マニュエラは、モナシュ大学の主任研究員であるほか、ロイヤルオーストラリア化学機構(Royal Australian Chemistry Institute)委員、そして科学分野における少数派の認知度を高める非営利の取り組み「ラベルなき科学者たち」(Scientists without Labels)の共同創設者として精力的に活動しています。
リーダーの地位にいる人々の構成は、とりわけ科学、テクノロジー、エンジニアリング、数学、薬学などの分野において、少数者集団を代表する人がいないことが往々にしてあります。 女性やその他の集団は、役員会や委員会、教職員や経営幹部などで依然として圧倒的少数に留まっています。 科学やエンジニアリングの学位を取得した女性の割合は最近数十年で増加しているにもかかわらず、業界や学会で指導的地位にいる女性の人数はあまり増加していません。
ストーリーテリングを通じた少数者集団の露出度の向上
北西スイス応用科学大学(University of Applied Sciences Northwestern Switzerland)の学士課程の際、化学専攻の女子学生はたった2名で残り25名が男子学生、学部全体で女性教授は1名のみでした。 昨今では教室はジェンダー面でバランスが取れているようですが。そのころは気にしませんでした。最近では、学生やキャリアをスタートしたばかりの研究者の中では、多様な背景のロールモデルがいないことが話題によく上ります。 また、これは学生が科学で進路を決めるときまたは才能ある若い科学者が科学をあきらめるときの、主な要因としても頻繁に話されています。
おそらく若いころに科学に対する野心を持っていなかったため、成長の際にはロールモデルの欠如を体験したことはありませんでした。 しかし、若い科学者として学生と若い専門家の懸念を何度も聞いたことが、2人のポスドク研究者エミー・チェンおよびシェズ・シヴァンサンと共に「ラベルなき科学者(Scientists without Labels)」を創設したきっかけでした。 この非営利活動の目的は、多様な背景を持つ若くて成功した研究者のストーリーを共有することで、科学における少数者団体の露出度を高めることです。 彼らのインスピレーションに富んだ話は、私たちの新しいウェブサイト、ソーシャルメディア(Facebook、Twitter、Instagram)で共有されています。
多様性に富む職場の利点を認める
これまでの経歴で、私は多様性が単に受け入れられているのではなく、歓迎されている環境で勤務する幸運に恵まれてきました。 その一つは2015年のCAS Future Leadersプログラムです。多様かつ若くて才能ある科学者20名が世界中から招待され、米国オハイオ州コロンバスのCAS本社を訪れました。 1週間という期間を通じて、科学情報ソリューションであるSciFinderの裏側の日常的業務を学び、多くの人間関係構築と専門家としての発展を促すさまざまな機会が与えられました。 同プログラムは最後にボストンで開かれた2015年秋季ACS全国会議・展示会に参加することで終了しました。
社会の主流から取り残された集団はキャリア向上で不利な面があり、共感が得られないと感じるものです。 多様性に富むチームは往々にして創造性に優れ、革新的で効率的であるという説得力のある根拠を鑑みて、文化的変化が求められています。 また、私たちの複雑な社会の問題に適切に対処するには、実際に多様な背景を持つリーダーたちの存在が不可欠です。 CAS Future Leadersプログラムは、多様性が世界中の若い研究者を鼓舞してやる気を与え、次世代のリーダーに影響を与えていくということを示す素晴らしい例です。
博士課程の学生、ポスドク研究者、またはその指導者の方で、科学のリーダーシップにおける多様性の利点を学習、そして体験したい方は、 2020年CAS Future Leadersプログラムの詳細をこちらでお読みください。 申し込みの締め切りは2020年1月26日(日)です。