
忘れられた研究はスーパーバグとの戦争に新たな攻撃ラインを生み出す
最後の手段である抗生物質と抗ウイルス剤は、かつては簡単に治療できた感染症に対する効果が低減し続けるため、効果的な治療法の早期発見が世界保健機関(WHO)と世界中の保健機関の優先事項となっています。新たな抗菌性の研究は新規治療法を確立できるものの、新規薬剤の市場参入プロセスは、絶え間なく進化し続けるスーパーバグに追いつくには時間がかかりすぎます。 この挑戦に対処する為、革新的な組織は過去の抗生物資の再発見をし、現在の技術や技能の助けを借りて、抗菌薬耐性との戦いに新たな手法を開発し続けています。
抗菌薬耐性と命のための戦い
感染症との戦場では、抗生剤と抗ウイルス剤が我々の武器になります。1世紀以上にわたり、抗生剤と抗ウイルス剤はバクテリアやウイルスと戦い効果をあげましたが、最近になってのその成功が仇となったのです。数々の微生物がこれらと同じ敵と何度も対戦したため、抗菌剤の攻撃に対して新たな戦略とより強力な防衛策を進化させました。 そのため、ほとんどの抗生剤と抗ウイルス剤が倒すべきスーパーバグと呼ばれる相手は、使い古された武器に対して強力になり過ぎたのです。WHOはこの抗菌剤耐性(AMR)を世界衛生上の緊急課題であり、世界の人口を脅かす最も急を要する衛生上の課題としています。
このスーパーバグは、真に不安を駆り立てる速さで出現し拡散しています。最大の例は、広範囲薬剤耐性結核(XDR-TB)で、これはTBの中でも最も悪性の薬剤耐性です。2006年の最初の発見以来、2016年までに121ヵ国で発見され、現在利用できる4核の抗TB薬の全てに耐性を持ち、感染すれば28%の死亡率です。WHOはまた、数々の抗生剤と抗ウイルス剤はHIVや大腸菌、黄金ブドウ球菌、マラリアへの治療効果はもうないと報告しています。これでもまだ心配にならないでしょうか。WHOは2017年の報告書で臨床開発ではAMRに先立つ十分な抗菌剤はないと報告しています。
新しい抗菌薬の開発が低迷する中、患者レベルでのスーパーバグとの戦いは停滞しています。現在の通常の治療法では、既存の第一選択の抗菌薬の投与量を増加し、それらが無効だと証明されれば、患者は第二選択薬を処方されます。それが失敗した時、第三選択薬へ移行し、最終的な手段としての抗菌剤が処方されるまで続きます。第一選択薬物より上の薬剤は高価な場合が多く、これは先進国では膨大な予算株となりますが、途上国ではまかないきれない経費になる場合も多いのです。その結果、疾患が長引くこととなり、かつては簡単に治療できた病で貧困国の何百万もの人々が命を落とすことになります。
遡及的な研究は、新しい抗菌薬を第一線に届けられるのでしょうか?
早急な新規抗生剤の開発が必要であることは明確ですが、創薬の速度を高め、より効果的な薬を臨床の最前線に届ける為はどうしたらいいのでしょうか。過去の研究へ戻り、忘れられた微生物の武器を明らかにすることもひとつの考え方です。
世界中の研究者は、過去に開発され特許が取得された古い抗生剤で、臨床で使われる前にさらに開発が必要だった為に市場参入できなかった 薬を研究しています。デュポンが1970年に開発したリネゾリドがその一例です。強力な抗生剤にもかかわらず、肝毒性を引き起こすことが発見された為にお蔵入りとなりました。20年後、Pharmacia & Upjohn(現在のPfizer)がリネゾリドをより安全にして再開発し、2010年には売り上げ10億ドルを超えるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に対する主な薬品となりました。
今日の分析技術を適用し、我々は科学の墓場から抗生剤を復活させるメカニズムへの新たな洞察を明らかにします。例えば、オーストラリアのハドソン医療研究機関はコールタールの抽出物で、1950年代第一次世界大戦前に局所抗生剤として塹壕でペニシリンの代わりに使用されたアクリフラビンの研究をしました。現代技術の助けを得て、研究者はこの抗生剤はバクテリアを殺すと同時に免疫システムをさらに刺激し、感染症へダブルで強力な力を与えることを発見することができました。アクリフラビンからは、50年以上前に廃棄が決まった薬品でも我々が知らないことは多くあり、しばしば科学的理由ではなく商業上の理由で廃棄されていた薬品があったことがわかりました。
抗生剤の効果的な遡及的研究を可能にするツール
効果的に過去の薬品へ再びたち戻ることは簡単ではありません。特に専門的な資源がない場合、さらなる開発の可能性を秘めた忘れられた分子を見つけることには時間がかかります。過去の抗生剤を復活させることを考えている場合は、効率よく利用可能なデータへアクセスできていることを確実にするための専門的な研究ツールの使用を模索するのがよいでしょう。
私達は、デジタル方式で情報を即座に見つける事にあまりにも慣れてしまっているため、過去の研究成果の全てが電子時代へ飛躍したと思い込んでしまうことがしばしばあります。多くの場合はそうなのですが、デジタル時代以前の内容も含むCASのSciFindernなどの情報ソリューションは、いわゆる「忘れられた」科学を発見するのに重要なツールとなっています。
さらに、ChemZentTMは研究者に1830年から1969年まで続いたドイツでもっとも歴史のある化学抄録の出版物Chemisches Zentralblattを英語でデジタル検索できるようにします。ChemZentコレクションのお陰で、1世紀以上前の研究における物質と話題を検索できるようになりました。このようにして、ChemZentは科学者に、膨大な可能性を秘めた期待の持てる化合物に関する忘れられた研究を再発見できるチャンスを提供します。
破棄された抗生剤の多くは特許を取得していますが、これらの特許は発見できない事が多く、重要な化学物資が隠されたままになっていることもあります。 SciFindernは、膨大な特許と注釈付き化合物の幅広いコレクションで、アーカイブされた抗生剤の発見を容易にします。さらに、SciFindernの統合により、特許や非特許文献とChemZentのようなコレクションが同時に比較できます。
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