医薬品製剤データを発見可能にする

Jennifer Sexton , Director/CAS Custom Services

The world of big data is seen in this complex and vibrantly colored visual representation of data.

医薬品の製剤開発においては、データインフラはフォーミュレーターのためだけにとどまらず、製剤メーカーや規制チーム、法律顧問、財務部門、そしてその他の事業部門と結束できる機会を提供します。 そこにおける最終的な目標は、組織全体の業務効率と有効性を高めることです。

ところが、散在したデータソース、つまり例えば研究日誌やスプレッドシート、データベースなどに依存してしまうと、製薬企業はデータの管理とディスカバビリティで多大な困難に直面します。 つまり、大量のテキストやスプレッドシートをより分けるために手作業が必要になり、その結果、調査時間が増え、生産性が妨げられ、労力の重複や過剰支出につながっていくのです。 グループ間の洞察の共有や透明性も著しく制限され、問題をさらに複雑にします。

製剤開発におけるそういった課題のせいで、60%以上の企業がプロジェクトの遅延や失敗を経験しており、しかもその遅延の半数以上が12か月を超えるほどになっているのが現状です。

異なった情報源に存在するダークデータを解き放ち、そして構造化することで、データ要素間に有益な関連性を明らかにし、科学とオペレーション、そしてビジネスの意思決定をよりスマートにそしてより速く行うことができるようになります。

有益なパターンを特定し、医薬品の製剤開発を効率化させるには、クリーンであり、関連付けられた検索可能なデータが必要です。

レガシーのデータマネジメント方法の中にも、手順やプロセス、または成分情報が保管されているため、そこにも重要な疑問に対する回答が見つかるかもしれません。 情報にアクセスできず、意思決定を進めることができなかったら、どうなるでしょうか。

標準化されていないと、矛盾が発生し、効率的なデータの取得が妨げられます。 例えば、エタノールといったシンプルな成分ですら、研究日誌によってはアルコールやエチルアルコールなどと記録される場合があります。 このような食い違いは検索可能性を阻害し、不完全な情報を生み出す要因となるほか、情報に基づかない決定や、コストのかかる再処方をもたらす場合もあります。

最近のCASの調査では、フォーミュレーターの科学者は研究室内の時間の60%を、処方の反復に費やしていることを認めています。

企業の開発パイプラインのこの段階で、フォーミュレーターの科学者や知財研究者が直面する膨大な時間的負担は、製品の商品化にかかる合計時間に大きく影響します。 フォーミュレーターの科学者のために設計された、信頼性の高い適切なキュレーションを経た情報にアクセスすることで、企業は効率を高めながら、処方・製剤データの戦略的価値を高めることができます。 データの利用者は、手作業による情報処理に費やす時間を減らし、不必要な反復作業を排除することで、製剤ワークフローを加速させることが可能になるでしょう。

ダークデータの価値を引き出すことは、豊富な経験を持たない者にとっては特に有益です。 テクノロジーや科学、そして処方・製剤を構成するさまざまな要素の適合性に対する理解が、加速度的に深まるためです。 新入社員であっても、それにより各段階におけるデータを追い、それぞれの特性を知り、機能を調査し、そして一般的な使用法を分析するなどして、複雑な現在の医薬品開発や過去の取り組みを素早く把握することができます。

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情報を構造化させ、そしてデータの関連性を確立するのは、医薬品の開発チームだけにとどまらないようにする必要があります。

複数の製品ラインを管理し、医薬品やその成分をリパーパシングし、そして新しい治療薬を開発していくには、データの共有は不可欠になります。

医薬品のライフサイクルは、その各段階で新しいデータが生成されます。 ダークデータの価値を引き出す戦略を展開することで、データサイロを排除し、そして情報構造を最適化すれば、特許状況の分析や原材料の選択から価格設定や製品生産終了に至るまで、医薬品のライフサイクル全体を通じて、情報に隠されたパターンと機会を特定できるようになります。

すべての関連情報が特定されたら、あとは処方・製剤データや規制当局による承認、臨床試験の状況、原料のグレードと規模、原料価格、そして成分サプライヤー情報などさまざまな側面との間で、一貫性と検索可能なプラットフォームを徐々に確立することができるでしょう。 これにより、開発フォーミュレーター、製造フォーミュレーター、知財担当弁護士、財務部門、そしてマーケティングチーム間の透明性と協力体制が新たなレベルに引き上げられ、以下のようにさまざまな形で必要な情報を効率的に取り出せるようになります。

  • 知的財産(IP)や規制情報、そして競合に関する見識に基づき、ドラッグリパーパシングまたは新規治療薬の開発機会や有効成分のリスクを特定する。
  • 自組織内で、各分野にまたがって有効成分に関する処方集にアクセスする。
  • 安定したサプライヤーから成分を調達するか、または開発や大規模提供を支えられる代替サプライヤーを特定する。
  • 市場データにアクセスして顧客のNAICSコードを特定し、その中で最も高いコードに合わせて製剤を調整する。
  • 原料分析を行い、新製品のコストと適切な価格設定を決定する。
  • 成分の特性と類似構造を調査し、その成分が使用されたすべての処方例と社内の開発の取り組みを特定する。

信頼できる競合情報メカニズムを構築してROIを最大化する

製薬業界における完全な情報開示とは、企業秘密環境が存在しないことを意味します。 特許や臨床試験、そして薬事承認は高度に構造化されています。 製薬会社は、この情報を使って社内の処方戦略の指針にすることができます。

例えば、ある特許が特定の処方を保護しているかどうかを判断し、発見段階でその賦形剤を特定する、などです。 そうやっていくつかの段階や情報の種類を通じてデータを追跡し、処方とその適用、送達、機能、効能なども判断できます。

それだけでなく、知財調査担当者であれば、知的財産の知識にギャップが発生しないよう、関連する検索戦略にさらなる時間を費やしています。 徹底的な知的財産の調査を行うため、そうった専門家は処方の開発段階で簡単な答えを見つけるために数週間かけて何百もの特許文献を調べることすらあります。

そんなとき、徹底的にインデックス化され、そして構造化された競合他社に関するデータへのアクセスがあれば、パターンが容易に見えるようになり、そしてどの分野で競うべきか、または競うことになるのかを特定できるようになります。 質の高いデータベースと構造化されたナレッジマネジメントプラットフォームへのアクセスがあれば、以下のような重要な質問に対する回答を確実かつ効率的に得ることができるようになります。

  • 競合他社では処方の一部として何を請求項にしているのか。
  • どういった処方例を保有しているのか。
  • 特化した成分ではどういったものを使っているのか。
  • 何か新しいものは使っているのか。

その上で、そこから得られた洞察を組織内のデータや能力、または取り組みなどとすり合わせることで、潜在的な処方開発の機会を見つけることができます。

異質データベースがたくさんあります。それらをどうやって将来に備えて統合したらいいのかわかりません。いったいどこから始めるべきでしょうか。

製薬会社では、サイロ化したデータに対処する必要に迫られています。大体において、その他すべてにおいて構造化が始まっているためです。 業界はファーマ4.0に向けて前進を続けており、コンプライアンスのガイドラインも進化しています。

そんなとき、まずどこで行き詰まっているのか、絞り込みます。 情報を探している際、フラストレーションを覚えるのは、どこでしょうか。 何が見つけらないのでしょうか。 どんな質問に対する回答を探していたのでしょうか。

こういう場面に直面したとき、なぜそれが問題なのか、何を達成しようとしていたのかを明確にします。 問題の本質と、その課題が分かるようになってきたら、何が必要なのか生産的に模索することができるようになります。

つまり、まずは何が必要なのか、その根本を探るようにします。 その上で、ダークデータから価値を引き出す必要のある領域や、関連付ける必要のある情報源のガバナンス構造の成熟度、そしてソリューションを定義するのを支援してくれるデータリーダーを評価していきます。

ある大手の医療技術企業が、数十年にわたる重要な研究結果が「ダークデータ」に封じられていたため多大な時間とコストがかかっていたところ、それにどのように対処したか、その事例をお読みください。

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情報の優位性を獲得することが重要です。 ナレッジマネジメントソリューションは、収益性の高い製剤開発を促進できるにものに投資しましょう。

競争で優位に立つためには、製薬会社はバリューチェーンのあらゆる側面、特に製剤開発段階を活用する必要があります。 製剤は患者のコンプライアンスに大きく影響し、市場での成功に影響します。 フォーミュレーターの科学者に対して関連性のある研究プラットフォームを提供すれば、企業はワークフローを効率化し、製剤の研究開発のスピードアップを実現できるという恩恵が得られます。フォーミュレーターのワークフローの各段階に投資することで、競合他社よりも情報の優位性が得られ、企業の位置付けを向上させることが可能になるのです。